仙石浩明の日記

2006年5月3日

勝ち組になるには

先月 4/14 19:30 NHK で、特報首都圏「就職戦線異状あり・格差社会の不安」と 題する番組があった。 新卒の学生さん達が「勝ち組になる」ことを目指して 就職活動を行なっているのだという。

そりゃ、勝てるものなら勝ちたいと思うのは人の常なので、 これから社会に出ていこうとする学生さん達が、 将来勝ち組になれるような就職先を選ぼうとするのは至極当然のことだと思う。

ところが

学生さん達曰く、「勝ち組になるため、儲かっている会社に就職したい」。

オイ、それは根本的に間違ってるぞ、と言いたくなる。 儲かっている会社、それはお金を産み出す仕掛けが確立している会社である。 つまりできるだけ属人性を排した、回り続ける仕掛けが確立している会社である。 このような会社が新卒採用を行なうのは、 仕掛けを維持するために「歯車」の補充を行なうためである。

すでに出来上がっている仕掛けは、それが陳腐化するまでは、動き続けるだろう。 動き続けるには若い人を採用し育てることが必須だから、 そういうことまでも含んだ仕掛けである。 このような仕掛けに参加すれば、 仕掛けの中で活躍できるレベルまで育ててもらえるし、 仕掛けが動き続ける限りは安泰である。

しかしそれは「勝ち組」ではない。 勝ち組なのは、放っておいても回り続けるその仕掛けを作り上げた人であって、 いったん仕掛けが回りはじめたとき、 その人はその仕掛けの中にはいないはずである。 それが「属人性を排する」という意味である。 「属人性を排する」すなわち「置き換え可能」な人材で 仕掛けを回すことであり、 置き換え可能な人材は「勝ち組」では有り得ない。

したがって、勝ち組になるには、 出来上がって回りはじめた仕掛けに歯車として参加するのではなく、 そういう仕掛けが無いところに参加し、 仕掛けを作る側にまわらなければならない。

もちろんどうやって仕掛けを作るべきか最初は分からないだろう。 当然、失敗することもある。 しかしそうやって無から有を作り出す経験を積んだ人材は決して、 置き換え可能ではない。 仕掛けを作り上げようと悪戦苦闘する組織は、属人性のカタマリである。 将来の勝ち組になるには、 そういった組織の中に身を置かねばならない。

追記: 「「兵士としての教育」が隠蔽され、誰もが「将軍の夢」に酔っている異常」は、視点は違うが、私が言いたいことと同じ事を言っているように思われる。つまり兵士(仕掛けの中の歯車)をめざすなら兵士の道(仕掛けが出来上がってる組織)を、将軍(勝ち組)をめざすなら将軍の道(これから仕掛けを作ろうとしている組織)を進め、ということだろう。両者は根本的に異なる道なのだから混同すれば不幸になるだけである。
Filed under: 技術と経営 — hiroaki_sengoku @ 07:52

2 Comments

  1. >オイ、それは根本的に間違ってるぞ、と言いたくなる。
    まったくその通りですね。
    ほんとは、世の中に出てくる前にこういう事を学んできたほうがよいのでしょうね。

    Comment by 雑記人 — 2006年5月8日 @ 13:10

  2. 学校で世の中の仕組みを教えないのも問題ですが、こういう勘違いを正そうともせず、逆に助長する報道を行うマスコミのほうが、もっと問題ですよね。

    Comment by 仙石浩明 — 2006年5月8日 @ 18:19

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