仙石浩明の日記

経済・投資・納税

2024年10月26日

私の FX取引 10年間の振り返り

今から 10年前、 2014年当時の私は米ドルをほとんど持っていなかったので、 ドル建て債券を買おうとすると、 まずドルを買う (円をドルに替える) 必要がありました。

ところが当時は黒田バズーカによる急激な円安が進行中だったので、 少しでもドルが安い (つまり円高) 時にドルを買いたいわけです。 一括で買えば手数料は安くて済みます (当時の証券会社は数万ドル程度の小口買いだと手数料が 1ドルあたり片道 50銭くらいしたと記憶してます) が、 小口に分けて買いコストを平均化したい (ドル・コスト平均法) ですし、 証券会社の営業時間外でもドルが安値をつけたら、 (たとえ深夜でも) その瞬間に買いたいものです。

そこで、 FX で数日間にわたってドル買いポジションを増やすことで、 ドルの平均買いコストを下げることにしました。 実際に債券を買うときに (より) 円安になっていて差損を被っても、 FX で取り戻せるわけですね。 いわば為替予約の FX 版。 2014年11月1日 01:00 に、 初めての FX 取引を行いました。 1ドル=112.108円で ドル/円 (USD/JPY) 1万通貨単位を買い建て。 つまり 1万ドルを 1,121,080円で買う予約をしたのと同じ効果があるわけです。

こうして始まった私の FX取引が、 来月 11月1日 01:00 でちょうど 10年になります。 この機会に、 これまでの 10年間を振り返ってみます。

10年前、 初めのうちは外貨の平均買いコストを下げるヘッジ取引が中心でしたが、 しだいに欲が出て、 為替変動が激しいときは積極的に利益を取りに行くようになりました。

最初はギリシャ危機再燃によるユーロ暴落でした。 2015年6月29日(月) 週明けから暴落したユーロに果敢に立ち向かったのでした。 このときの必要証拠金が 900万円超。 レバレッジ 25倍なので、 2億円を超える外貨を売買したことになります。 はじめて持った大きなポジションでした。 結果、 13時間で 200万円ほど含み益を増やしています。 ビギナーズラックだとは思いますが、悪くないですね。

2015年 当時 USD/JPY は 124円前後でしたが、 円安すぎると思ってました。 まあ、2024年の現在と比べるとかなりの円高水準ではあるのですが、 当時は米国の景気も悪くて低金利でした (米2年債が 0.7% くらい, 日本はゼロ金利)。 実際、経済ニュース等を見ていても円の実質実効為替レートが 1973年1月以来の弱さになっているという論調が多かったと記憶してます。

行きすぎた円安はどこかで揺り戻しがあるはずで、 実際 8月には USD/JPY が急落する場面もありましたし、 来年 2016年こそは円高に向かうだろうと思い、 年末から USD/JPY やクロス円を売りまくりました

ちなみにクロス円というのはドル以外の通貨 (ユーロ, ポンド, 豪ドルなど) と円との通貨ペア (つまり EUR/JPY, GBP/JPY, AUD/JPY など) のことですが、 例えば EUR/JPY は、 EUR/USD と USD/JPY を掛け合わせて (クロス) 算出することから、 クロスレートと呼ぶそうです。
つまり基軸通貨たるドルとの通貨ペア 「ドルストレート」 (EUR/USD, GBP/USD, USD/JPY, AUD/USD, USD/CAD など) だけ決めておいて、 それ以外の通貨ペアのレートは掛け算で算出するわけです。 で、円を含むクロスレートだから 「クロス円」。
確かに実需ではドルとの取引が大半 (9割近く) ですが、 為替取引全体における実需の占める割合は 1割未満に過ぎないので、 クロス円という呼び方が適切なのか疑問だったりします。
(日本の) FX では円との取引のほうが圧倒的ですからねぇ。 むしろ円ストレートとか呼んだ方が実体に即しているかも知れません。 スプレッドも円との通貨ペアのほうが、 ドルストレートより狭くなりがちですし。

ところが 2016年1月29日(金) に日銀がマイナス金利導入を決定、 それを受けて USD/JPY が 2円も急騰した (100万通貨単位くらい円を買い持ちしていたので含み損が一日で 200万円も拡大した) ので怖くなり、 ポジションを縮小してしまいました2月から再び怒涛の円高 (2月11日には 110円台、6月には 100円割れ!) が進んだわけで、 円買いポジションを維持していれば爆益でした。 千載一遇の大チャンスを逃してしまったわけで、 なかなかうまくいかないものですね。

同じマイナス金利ネタでも、 2016年4月28日の 「日高ショック」 による 3円の円安には耐えることができました。 「日銀:金融機関への貸し出しにもマイナス金利を検討-関係者」 というデマが、 Bloomberg で流れたのです。 市況かぶ全力2階建でも紹介されました。

世界的な景気悪化と原油価格の下落でリスク回避 (当時は 「リスク回避 = 円高」) が強まる中、 2016年6月24日のブレグジットが混沌に拍車をかけました。 怒涛の円高で 98円台へ突入したのでした。 ポジションを縮小してしまったとは言え、 ドラギ・マジックなどもあって、 8月までの円高で 500万円ほどの利益を得ました

2016-02-01 USD-JPY 1-day chart

FX を始めて 3年くらい経ったとき疑問に感じたのは、 「なぜ FX で損をする人が多いのか?」 です。 FX会社が儲かるのは損する人が多いから (店頭FX) ですよね。 大きく勝つのは難しいにしても、 年率 10% くらいなら無理なく稼げると思うのですけれど。

中の人に知り合いはいないので全くの想像ですが、 店頭FX って顧客を何段階かにランク分けして、 「カモ」はカバー率を下げてるんじゃないかなぁ? 全ての注文 (の合計) をバカ正直にカバー先へ取り次いでるだけだと大して儲からない (注文が一方向に傾くと、昨今のスプレッドは狭すぎて逆鞘になってしまいます。 まあ、大抵は売り買い同数に近くて、 狭くてもスプレッドぶん丸儲けなのかもしれませんが…) ですよね? カモの注文を取り次がなければ、 カモが損した分がそのまま儲けになりますから。 ランクの最下位は「逆神」かな? 売り買い逆にしてカバー。
2018年に始めた取引でいきなり 100万円以上の損失を出した私はカモ認定されたハズで、 2022年に取引を再開したとき、 私の注文はカバーしなかったんじゃないかと妄想してます。 最大 400万円の損害を与えたかもしれませんね。

結局のところ、 みなさん早すぎる損切り (あるいは早すぎる利益確定) で儲け損なっているのでしょう。 前述の例で言えば、 円高になると確信していても、 マイナス金利で市場が動揺して (一時的に) 円安に振れると、 怖くなってポジションを縮小してしまう。 儲け損なうのは、いつもそんなパターンです。

もちろん、 不本意な損切りをしなくて済むような資金的余裕、 あるいは同じことですが身の丈に合った投資額に抑えることは必須ですね。 強制ロスカットまで行かなくても、 資金の底が見えると、 どーしても早めに損切りしたくなってしまいますから。

ある日突然レバレッジが 1倍になっても (後述するように、 ウクライナ戦争のときにルーブルが突然 1倍になって、 夕方から 8時間で 800万円ほどかき集める必要がありました)、 全く動じずに証拠金を積み増すことが可能な範囲で取引したいものです。

新規注文を出す際、 逆指値注文を同時に出しておくと、 為替が想定と逆方向に動いたとき自動的に損切りできるので便利ですが、 為替が大きく動く時って、 得てしてまず逆方向に動いたりするものです (というかそれを意図的に仕掛ける人たちがいますね)。 逆指値注文が早すぎる損切りにつながっていないか確認することが重要でしょう。

さらに言えば逆指値注文の執行方法にも注意が必要です。 FX会社の多くは、 逆指値の売り注文はビッド (FX会社が買ってくれる価格) を参照しますが、 スプレッド (ビッドとアスクの差) が開くと逆指値が刈られてしまうんです。 早すぎる損切りが多発する一つの要因でしょう。
逆指値の売り注文はアスク (FX会社が売ってくれる価格) を参照してくれれば、 このような問題は起きませんが、 そういう FX会社は残念ながら少数派のようです。

以上のような考えで、 逆指値をつけずに取引することが増えていきます。 FX を始めてから 2017年までの 3年間、 毎年 100万円以上、 累計だと 700万円の利益を得た (ビギナーズラック?) ので、 少しばかり気が大きくなったというのもあるのでしょう。 各年の FX会社ごとの損益 (各年の確定申告書から転記しました) はこんな感じ:

SBI FXαライブ
スター
DMM.comIGサクソ
バンク
ヒロセ通商楽天
2014890,6501,059,0771,949,727
20151,570,747-346,400-81,66617,2031,159,884
2016298,8061,600,651-603,791131,7541,427,420
2017759,1001,699,653-4,4202,454,333
2018-1,341,250895,513-1,131,775-1,577,512
2019-52,4474,867,7674,815,320
2020-307,090-9,687,265-9,994,355
20211,900,38313,999,03715,899,420
2022841,193-7,485,726996,500-5,648,033
2023-1,331,7123,043,8552,942,3674,654,510
20242,099,06510,568,14512,667,210
890,6502,928,6303,054,1404,370,875144,5372,908,58013,510,51227,807,924

どの FX会社の取引アプリが自分に合っているか? いろいろ試してみる過程でどんどん FX会社を変えています。 2018年に新たに試したのはヒロセ通商でした。 始めての FX専門業者 (有価証券関連業を行なわない会社は「証券」の商号を付けられない)。 「レートが上昇するとともに逆指値注文の値も上昇していく」 トレール注文を試してみたかったのです。

ところがこのトレール注文が、 わたし的には最悪でした。 逆指値がレートについていくものだから、 上昇基調にある通貨がちょっと下がるだけですぐ逆指値にヒットしてしまい、 大きな利益を取り損なってしまうのです。 コツコツ損してドカンと利益を取りに行く私の投資スタイルには全く合いません。

結局、 わずか 3ヶ月でヒロセ通商は 100万円を超える損失を出し、 2018年全体としても初めてのマイナスに沈みます。 もうヒロセ通商は使うものかと、 いったん資金を引き揚げました。

が、負けたまま退散したというのはどうにも心残りで、 取引アプリの使いにくさが改善されたのを機に 2022年11月にヒロセ通商の取引を再開し、 翌 2023年と合わせて 400万円の利益を出し、 累計で 300万円近いプラスを達成、 ぶじ勝ち逃げすることができました。:-)
ヒロセ通商に限らず、 取引したすべての FX会社で、 最終的な FX損益がプラスなのが自慢です。
なお、 楽天証券の利益が突出していますが、 これは楽天証券が私に向いているからではなくて、 楽天証券の FX を使い始めた 2023年以降は、 IG証券を主に 「プランB」 用に使っているからです。 想定通りにコトが進めば、 利益の大半は 「プランA」 用の楽天証券に偏ります。

トレール注文を使ってみて、 「早すぎる損切りをしていては勝てない」 という考えは確信に変わりました。 また、 7年以上も使い続けた DMM.com を 2022年に止めたのは、 取引アプリで損切り幅が 99pips までしか設定できないからです。 損切り幅が (最大でも) わずか 99pips というのは、 早すぎる損切りばかりになり、 わざわざ負けるために FX をやってるようなものだと思うのですが…

2018年はマイナスに沈み、 さらに 2020年のコロナ禍と 2022年のロシアの侵略という 2つの厄災で大負けしたにもかかわらず、 10年を通してみると平均して年 278万円くらい稼げているわけで、 (意外と) 堅実な運用ができていると思います。

コロナ禍や戦争、あるいは為替介入などの有事を除けば、 ふだんの必要証拠金は 600万円を下回ることがほとんどです。 必要証拠金を投資額と考えれば、 年率 46% の運用になるわけで、悪くないですよね? :-) さらに 2019年以降に限定すれば (コロナ禍や戦争にもかかわらず) 年率 62% にも達します。

2018年までは、 ドカンと儲けている一方で初心者にありがちなミスで損失も大きかったようです。 例えば、 この表では 2016年の利益が 140万円になっていますが、 前述したように 2016年は 8月までに DMM.com で 500万円以上儲けたハズ…?

不思議に思って過去の取引履歴を掘り起こして見てみると、 2016年10月3日(月) からの わずか 1週間で 400万円以上を失っていました (;_;)。 月曜日は 1.29ドル台だった ポンド/ドル (GBP/USD) が、 金曜日には 1.18ドルまで実に 8.5% も下落しています。 特に金曜日 (2016年10月7日) は 1日で 6.1% も下落、31年来の安値を更新しました。

まさに 「落ちてくるナイフは掴むな」 の典型なんですが、 もう少し細かく見ると、 金曜日 21:30 に 1.23866ドルで買って 2分後に 1.23576ドルで売って 30,035円 損した直後、 21:33 に 1.23310ドルで売って 24分後に 1.23814ドルで買って 26,037円 損しています。 典型的な 「往復ビンタ」 ですね。まさにありがち… (>_<)

相場の乱高下にうまく乗れないときは、 いったん休むのが重要ですね。 うまく乗れると乱高下は大チャンスだったりするのですけれど。 例えば、高市〜石破ショックは、うまく波に乗れて 4時間で 70万円ほど稼ぎました。

2018年に初めての年間マイナスを経験して、 気を引き締めてのぞんだ翌 2019年は一転 500万円近いプラスでした。 勝因は、 言わずと知れたトルコリラのスワップポイントです。

ドル/リラ (USD/TRY) 22万通貨単位を売り持ち (つまり リラ買い) していたのですが、 2019年3月28日のスワップポイントが 376,002円にもなりました (1万通貨単位あたり 17,091円)。 想定元本は 22万ドル (24,419,859円) なので、 年率 548%! 闇金 (トイチ) もビックリ。 :-)

2019年3月28日のスワップポイントは異常値としても、 3月27日〜4月2日の 7日間の合計で 717,288円もあったので、 平均すると 1万通貨単位あたり 4,658円/日、 年率 153% ということになります。 つまり 1年で 2.5倍。
スワップポイントは FX会社によって異なりますが、 このときのトルコリラは、 IG証券のスワップポイントが特に (異常に?) 高かったようです。
ちなみに必要証拠金は 92,004リラ (1,822,240円) でした。 レバレッジは 25倍じゃなくて 13.4倍に下がっていたようです。 トルコリラは変動が激しいからでしょうね。

そして翌 2020年はコロナ禍ショックです。 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大や原油相場の急落がリスク回避を加速させ、 豪ドル/ドル (AUD/USD) は 0.70ドル (2020年初) から 0.55ドル (2020年3月19日) へ実に 21% も下落しました。

2020-03-19 AUD-USD 1-day chart

市場がリスク回避的だと豪ドルは売られやすく、ドルは買われやすいので、 AUD/USD の下落が特に大きくなりますが、 他の通貨ペアもあり得ないようなレートになり、 逆指値をつけていなかった私も損切りせざるを得ず、 1000万円近い損失をかかえました

ただ、損切りで損失を確定させる一方で、 底値では果敢に買いを入れました。 FX同様、ありえない価格 (史上初のマイナス価格!) になった原油先物についても (よく分からないまま) 原油ETF を買ってみました

結果的にこの底値買いが奏功し、 1年後の 2021年2月下旬には、AUD/USD が 0.8ドルに達するなど各通貨ペアで軒並み含み益が拡大し、 原油ETF と合わせて 1800万円の利益を得ました。 結果的に 2020年の損失の倍返しとなっています。:-)

そして翌 2022年はロシアのウクライナ侵略です。 2018年以来、 強いドルの影響で割安に放置されていた新興国通貨を買っていたのですが、 その中にロシアルーブル (RUB) もありました。

2022年2月24日(木) にロシアが侵略を開始した時に暴落したルーブルですが、 いずれ元の水準に戻るはずと考えてポジションを維持したままでした。 当時の USD/RUB のレートは 1ドル=82.73ルーブルでしたが、 さらにルーブルが下落する可能性を考えて 2月27日(日) に証拠金を積み増していたのです。

ところが、2022年3月1日(火) 16:04 に IG証券から必要証拠金率の引き上げの通知が来ました。 それまで 20倍だったルーブルのレバレッジが、 いきなり 3月2日から 1倍になったのです。 2月27日(日) に証拠金を 700万円 積み増していたのに、 さらに 3月1日(火) に 800万円 積み増す羽目に陥りました。

計 1500万円も短期間で集めるのは大変です。 しかも猶予は 3月1日 16:04 から 8時間しかありません。 すでに金融機関の窓口が閉っているような時間にどうしろと? このときは複数の銀行・ 証券会社の口座に分散して置いていた予備の資金をかき集めました。 有価証券の売却は時間がかかるわけで、 いざという時に備えてキャッシュを残しておくのは重要ですね。

ところが、それで終わりではなかったのです。 翌 3月2日 14:36 に強制決済を予告するメールが来ました。 2022年3月4日(金)午前0時 (つまり 3月3日の晩) 時点で、 ルーブルの未決済ポジションの強制決済を行うとのこと。 ご丁寧なことにメールに続いて 15:33 に電話もかかってきました。 こんな事態になってもポジションを維持し続けていた人って、 すごく少なかったのでしょうね。

もう猶予は 32時間余りしかありません。 翌 3月3日に USD/RUB が暴騰したら目もあてられません。 仕方ないので 3月2日 16:01 ごろ USB/RUB の取引が再開された直後に 1ドル=109.5ルーブルで 13万ドル分を手仕舞い、 トータル 471万円の損失を食らいました。 強制決済さえなければ、 3月30日には侵略前の水準 1ドル=84ルーブル台に戻ったので、 損失どころか利益が出ていたのですが。

ウクライナ戦争のインパクトが強すぎて注意が疎かになっていたのですが、 2022年は FRB が急激に利上げした年でもありました。 コロナ禍対策のため直前までゼロ金利だった (利上げ開始が遅すぎた) ことが急激さに拍車をかけました。 米2年債のチャートを見ると、 その利上げの速さ、到達点ともに、 いかに 2022年の利上げが異次元だったか分かります。 異次元過ぎて金融システム不安を引き起こしました

2014-2024 US02Y 1-month chart

2022年2月下旬に USD/JPY は 114円台だったのですが、 3月7日(月) から急に上昇を始めます。 どんどん進むドル高を目の当たりにしてあろうことか私は、 こんな流れがいつまでも続くハズはないと 123円超えあたりから徐々にドル売り (ドル以外の通貨買い) に転じてしまったのです。

当時の私は 2015年6月の 125円あたりをドルの高値のメドと安易に考えていたのでしょう。 当時はまだ 「有事の円買い」 と言われていましたし、 これから円が独歩安になるとは夢にも思っていませんでした。

USD/JPY は 3月に 125円に達した後、 いったん下がりますが 4月からは再び上昇に転じて 125円を軽々と超え、 6月には 135円、 9月には 145円を超えてしまい、 損失がどんどん膨らみます。

今から振り返れば、 もともと戦争による 「有事のドル買い」 でドル需要が高まっていたところに、 日米金利差の急拡大でキャリートレード (円売りドル買い) の需要が一気に増大したのだろうと思うわけですが、 2022年の渦中にあっては 「行きすぎた円安」 と見えてしまうのも仕方がない気もします。
6月の時点で既に 20円も円安になってるのに、 これから年内のうちにさらに 20円も円安になるとは、 ふつう予想しませんよねぇ?
バブルがどこまで膨らむかなんてことは予測不可能なわけで、 むしろ損失が膨らむのは不可避と諦め、 バブルが崩壊する過程 (2022年11月11日の CPI ショック) で損失を取り戻すほうがマシのような気もします。

損切りが遅いわけでは決してなく、 途中何度も損切りしているのですが、 逆張りを試みては損切して何百万円か失う、 を何度も繰り返しているうちに損失がどんどん累積していきました。

2022年9月22日(木) の介入で多少は挽回できたものの、 これでドルはようやく下落に転じるだろうと予想してしまい、 さらに傷口を拡げる結果となりました。 10月には USD/JPY が 152円に達してしまい、 年初からの損失の累計が 1600万円 (ルーブル強制決済の損失を含む) に達してしまったのです。

2022年9月22日(木) の介入は、 すぐ全モ (全戻し) になって 「神田暴威」呼ばわりされたのですが、 10月21日(金) と24日(月) にも介入を実施したことで USD/JPY の上昇がようやく止まりました。 この 3回の介入額は合計 9兆1880億円だったそうです。

円ほどではなかったにせよ、 (ウクライナ戦争の影響をモロに受ける) ユーロも異常事態で、 2022年7月12日には (ギリシャ危機でも割れなかった) パリティがついに割れてしまったのでした。 ドルインデックスは 2022年9月28日に 20年ぶりの高値 114.78 を記録しています。 当時は円だけでなくドル以外は全て弱かったわけで、 円だけが弱い 2024年の円安 (ドルインデックスは 2024年4月16日の 106.58 がピーク) とは違いますね。

年末が近づいてきた 11月初め、 このままでは記録的な年間損失になるなぁ… と半ば諦めていたところ、 2022年11月11日の CPI ショックで 800万円以上挽回し、 さらに 12月19日の日銀の利上げで 200万円以上取り戻すことができました。 結果、 1年のトータルでは 565万円という常識的な額の損失に抑えることができました。

twitter などを見ていると、 この CPIショックで大損した人もいるようですが、 CPI 自体は多少予想を下回った程度で、 米景気はまだまだ底堅いことを示しています。 にもかかわらず 「CPIショック」 が起きたのは、 それだけ 米ドル バブルが膨らんでいて、 CPI 発表は最後の針の一突きだったということでしょう。
つまりこの CPI 発表前の局面ではドル売りが正しくて、 ドル買いはキケンだったということです。 私は必要証拠金が 1000万円を超える (つまり想定元本が 2.5億円超) ほどドル売りポジションを膨らませていたので、 この CPI ショックで 800万円もの含み益を得ることができました。

翌 2023年は、 2期10年を務めた黒田日銀総裁が退任し、 2023年4月に植田総裁が就任しました。 就任早々利上げすることは無いだろうし、 米国の景気もしばらくは安定しているだろうとふんで、 5月からスワップポイント狙いに宗旨替えしました

少しでも波乱があると、 スワップポイントによるコツコツ利益なんて一発でドカンと吹っ飛ぶわけですが、 幸いなことに 5月から 11月まで半年間も続けることができて、 スワップポイントだけで 300万円を稼ぎました

既に口座を持ってる (FX 取引が可能な) 証券会社の中では、 楽天証券が一番スワップポイントが高かったので、 このときから楽天証券に乗り換えています。 2023年11月21日時点での GBP/JPY のスワップポイントが 1万通貨単位あたり 295円、 必要証拠金が 74,240円だったので日歩 40銭。 USD/JPY だと 220円と 59,370円で日歩 37銭。

このとき楽天証券における全ポジションの必要証拠金合計が 5,421,580円で、 スワップポイントの合計が毎日 20,045円でした。 もしこの状態を 1年間続けることができたら、 542万円の必要証拠金で 732万円を稼ぐことができることになります。 元手が 2.45倍になるのだから魅力的ですね。 為替が安定していれば、ですが。

2023年10月19日に米2年債の金利が 5.26% のピークをつけたあと下落に転じたので、 11月に入ってからは USD/JPY を一部手仕舞って GBP/JPY や EUR/JPY の比重を高めていました。

ところが 2023年12月7日(木) に、 植田総裁の 「年末から年始にかけてチャレンジングな状況になる」 発言、 いわゆる 「植田チャレンジング・ショック」 で 147円台だった USD/JPY が一気に 141円台へ突入してしまいます。 もちろん GBP/JPY と EUR/JPY も揃って下落、 600万円もあった含み益が 200万円まで減ってしまいました。 こういうことが起きるからスワップポイント狙いは怖いですねぇ。 先が見えなくなったので、 いったん手仕舞いました。

12月19日(火) に植田総裁は 「チャレンジング」 の意図を問われ、 「一段と気を引き締めてというつもりで発言した」 と弁明しています。 まったく人騒がせな話です。 とはいえこれで状況は 11月と何も変わっていないということになりましたから、 気を取り直して GBP/JPY を中心に再びスワップポイント狙いです。

2022年に続き 2023年も円安基調だったので、 スワップポイント狙いには最適な年でした。 2022年11月の CPIショックをきっかけに急激に進んだ円高でしたが、 2023年1月16日(月) の 127.22円が USD/JPY の底だったように見えます。
2022年の始めと比べると 15円も円安ですが、 たとえ日米金利差が縮まっても、 もう 120円を割るような水準には戻らないかもしれません。 唐鎌氏が 「弱い円の正体 仮面の黒字国・日本」 で述べているように 「強い円」 の時代は終わってしまったのだと思います。
おそらく、 コロナ禍で急激な円高が進んで USD/JPY が底値をつけた 2020年3月9日(月) の 101.18円が、 最後の 「有事の円買い」 となるのでしょう。 コロナ禍がまさに歴史的な転換点だったのだと思います。 2021年1月6日(水) の底値 102.59円以降は、 一貫して円安傾向が続いています。
ちなみにその前の底値は 2018年3月26日(月)、2019年1月3日(木)、2019年8月26日(月) で、 いずれも 104円台半ばです。 米中貿易摩擦の激化や中東情勢の悪化などで世界経済が減速した時期ですね。 当時はまだリスクオフといえば円高でした。 ちなみに 3つの底値のうち真ん中 2019年1月3日(木) はフラッシュ・クラッシュで、 その前後は 110円以上で推移していました。

翌 2024年の 2月からメキシコペソ (MXN/JPY) にも手を出しています。 新興国通貨はいつ暴落するか分からないので少額ですが、 10万通貨あたり MXN/JPY のスワップポイントが 260円、 必要証拠金が 35,300円なので、 日歩 73銭です。USD/JPY の倍ですね。 もし 4半期に一度スワップポイント (元手の 67.2%) を再投資しつつ 1年間続けることができたら元手が 7.8倍! (=1.672^4) にもなるわけです。 まあその前に為替差損でやられるでしょうけど。

当時最強通貨だったペソですが、 2024年4月9日に USD/MXN が 1ドル=16.26ペソ (MXN/JPY 9.3円) の 2015年以来の最安値 (ペソ最高値) をつけたあと上昇 (ペソ下落) に転じ、 4月19日に 1ドル=18ペソ (MXN/JPY 8.6円) まで大暴騰 (ペソ大暴落)し、 いったん戻すものの再び上昇 (ペソ下落) し 1ドル=19ペソ台 (MXN/JPY 7円台) で推移しています。

もしこのときまでスワップポイント狙いを続けていたら、 それまでの利益を全て吹っ飛ばして、 それよりはるかに大きい含み損を抱えるところでした。 スワップポイントを狙うのは為替が安定しているときに限りますね。 というか新興国通貨は暴落しがち (典型はトルコリラですね) なので、 スワップポイントを狙うのは時期を選ぶべきでしょう。 ちなみにコロナ禍のときはペソが大暴落して、 2020年4月6日に USD/MXN が 1ドル=25.78ペソ (MXN/JPY 4.2円) の最高値 (ペソ最安値) を記録しました。

4月19日のペソの大暴落に買い向かった後、 (急な円高に備えるべく) ポジションを徐々に円買い (豪ドル売り) へシフトしていました。 止まらない円安に打つ手は無いと思いましたが、 それでも日銀が何かするんじゃないかと警戒していたのです。 そして今年のゴールデンウィーク直前、 2024年4月26日(金) の日銀総裁会見で市場に衝撃が走ります。 植田総裁の「円安は物価の基調に大きな影響なし」発言ですね。

わたしは滅多にドテンをやらないんですが、 植田総裁の発言を知って、 この時ばかりは全力でドテン円売りを決行しました。 遅いランチを食べてくつろいでいた時だったのですが、 スマホで夢中で円を売りまくって (USD/JPY, EUR/JPY, AUD/JPY, MXN/JPY, NZD/JPY, CAD/JPY 買い) 気づいてみれば必要証拠金が 1500万円超。 4億円近く円を売ったことになります。

そして週が明けてゴールデンウィーク真っ最中の 2024年4月29日(月) こんどは円買い介入です。 散歩中に 13:05 から始まった USD/JPY の急落 (159.5円→158.2円) を見て、 13:06 から円を買いまくりました (USD/JPY, EUR/JPY, GBP/JPY, AUD/JPY, MXN/JPY, NZD/JPY, CAD/JPY 売り)。

5月2日(木) 05:10 にも再び介入が行われて、 歴史に残るゴールデンウィークになりました。 介入額は 4月29日が 5.9兆円、5月1日が 3.8兆円だったそうです。 神田暴威の面目躍如ですね。

USD-JPY 1-hour chart

そして最後が植田ショック、 いわゆる令和のブラックマンデーですね。 2024年7月31日(水) の金融政策決定会合後の記者会見で、 植田総裁がさらなる利上げを否定しなかったことで急激に円高が進み、 週明け 8月5日には先週比 10円ほど円高の 144円台に突入し、 株価が大暴落しました。

植田総裁の発言をきっかけとしたショックって、
2023年12月7日(木) の 「年末から年始にかけてチャレンジングな状況になる」
2024年4月26日(金) の 「円安は物価の基調に大きな影響なし」
に続いて 3度目ですよね? ちょっと多すぎません?

その 3週間前、 2024年7月11日(木) 21:30 の米 CPI 発表で、 USD/JPY が 161.5円から 158.3円へ 3.2円ほど急落しました。 一方、日本でも 7月11日 or 12日に 5.5兆円の介入が行われたと言われています。 確かに 7月12日(金) 8:25, 8:45, 22:05 に 1円ほどの急落が起きていますが、 介入にしては下落幅が小さいので、 もしかすると CPI 発表のタイミング 11日(木) 21:30 に合わせた (まさにステルス) のかもしれません。

「植田ショック」 というよりは、 CPI & 介入 & 植田発言の 3連発が、 植田ショックを増幅した (3倍増?) のでしょう。 私は 3連発最初の CPI 発表のタイミングで円買いへシフトしていたので、 3連発最後の植田ショック後 8月6日(火) 01:09 (未明) に手仕舞って 200万円ほどの利益を得ました。 これでしばらくは利上げが不可能になったと思い、 8月6日(火) 08:00 (つまり令和のブラックマンデーの翌朝) からは円売りです。 さらに 8月7日(水)、 日銀副総裁が 金融資本市場が不安定な状況で「利上げをすることはない」と明言したので、 安心して円売りを拡大しています。

9月に入って円高へ向かったので損切りして一時的に円買いへシフトしましたが、 2024年9月27日(金) の自民党総裁選で石破氏が選ばれて一気に円高になったのを受けて円売りに戻しています。

細かく言うと、 高市氏優勢で円安が加速した 9月27日(金) 12:52 に USD/JPY を損切り (高値で買い戻し) し、 高市氏が勝ったら USD/JPY を買おう (つまり円売り) と待ち構えていたところ、 14:38 あたりで石破氏が勝ちそうな感じがしてきた (ふだん録画でしか見ないテレビをずっとリアルタイムで見てました。 開票作業を どアップしてくれたので非常に参考になりました) ので一気に USD/JPY を売り (つまり円買い)、 実際に石破氏が勝ってから USD/JPY を一部買い戻しています。

本当は麻生氏が高市氏支持を決めた時点でドテン円売りすべきだったと反省。 そうすれば高市氏が優勢になるにつれ円安が進んだ局面でも稼げたのに、 ドテンどころか高市氏の優勢が報じられて円安の流れが確定的になるまで、 損切りすらためらってしまいました。 私は 27日(金) 午前中の時点では、 高市氏の優勢がどの程度なのか分かっていなかったのです。 今回のように誰が選出されるかで円高/円安がはっきり分かれるときは、 もっと注意深く動向を見守るべきですね。

石破氏が自民党総裁に選出されて円高が一服した 9月30日(月) 朝から、 もちろん円売り (USD/JPY, EUR/JPY, GBP/JPY, AUD/JPY, CAD/JPY 買い) です。 石破氏が金融緩和基調を変えないことを明確にするにつれ、 円安の流れが決定的になりました。

その後は現在に至るまで円売りポジションを継続していますが、 明日 10月27日(日) の衆議院選挙 (公示直後に期日前投票を済ませました) で与党が過半数割れしても、 先行き不透明感が増して円高へ向かうというよりは、 日銀の利上げがいっそう不可能になって、 しかも景気の先行きも不透明になって、 与党が過半数を維持できた場合よりも円安へ向かいそうなので、 このまま円売りポジションを維持すべきだろうと考えています。

映画 「シン・ゴジラ」 が 2016年に公開されたとき、 「1ドル=167円! ゴジラ上陸なら円安襲来!?」 という記事がありましたが、 いまや 167円も時間の問題であるように思えます。 この 8年は 「静かなゴジラ襲来」 と言っても過言ではないのでしょう。 まあ、ホントにゴジラが首都圏に襲来したら、 そんなレベルじゃ済まないと思いますが… (^^; 日本経済の 「壊滅」 じゃなくて 「消滅」 ですね。 円の価値は限りなくゼロに近づくでしょう。

こうして振り返ってみると、 この 10年は、 強い円から弱い円へ大きく変化した転換点だったように思えます。 前半は有事の円買いだったのに、 後半は有事だと円が売られるようになりました。 この 10年は黒田日銀総裁の 10年にほぼ重なるわけですが、 黒田バズーカ、 すなわち 「異次元の金融緩和」 がこの大変化を引き起こしたのでしょうか?

資金は最も有利なところへ流れます。 1980年代の金融緩和 (公定歩合を 9% から 2.5% へ引き下げ) のときは、 「Japan as Number One」 だったので、 供給された資金は国内に留まり円高とバブル景気を引き起こしました。

2013年から始まった異次元の金融緩和では、 供給された資金が国内企業への貸付へ向かうハズはなく、 国内よりずっと有利な投資先である海外へ流れてしまいました。 不動産関連へ流れて地価高騰を招いたバブル期のほうが、 国内に留まっていたぶんまだマシだったかもしれません。 世界中で余った資金は主に米国へ流れてドル高とインフレを引き起こし、 FRB の急激な利上げにつながっています。 こう考えると、 黒田バズーカがそもそもの始まりだった可能性はあると思います。 そこにコロナ禍とウクライナ戦争が重なったのは単なる偶然なのでしょうか。

来年 2025年はプラザ合意から 40年です。 日本の国運における40年周期説というのがありますが、 なにか諸々のことが関連しているように思えてなりません。 たくさんのことがこの 10年のうちに起きました。 仕事をしていたらそのほとんどを見過ごしていたかも知れません。 そもそも介入があっても、 仕事中だと対応できませんからねぇ。 いつ、どのようにして 「敗戦後の復興」 は始まるのか? これからも世界の動きを注意深く見ていく必要性を痛感しています。 13年前に FIRE していて本当によかったと思います。

Filed under: 経済・投資・納税 — hiroaki_sengoku @ 07:57
2022年3月9日

所得税を分割して、複数の高還元率クレジットカードを何回も使って納付してみた hatena_b

所得税の納付は、 確定申告書等作成コーナー経由だと全額一括払いになってしまうが、 国税クレジットカードお支払サイトを直接アクセスすることで、 任意に分割して支払うことができる。

この「お支払サイト」は、 氏名、住所、電話番号、納付先税務署、納付税目 (申告所得税及復興特別所得税) を入力した上で、 クレジットカードで任意の金額を支払う仕組みになっている。 それぞれの納税者が合計いくら納付済みか集計するには、 納税者と一対一に対応する ID (識別番号) が必要だが、 ID の入力は求められない。 つまり支払うだけの納付専用サイト。

e-Tax を使って確定申告を行った納税者なら e-Tax の 「利用者識別番号」が ID になるが、 e-Tax を使わなくても確定申告はできるわけで、 「お支払サイト」としては ID 無しで納付できる仕組みにするしかないのだろう。

この仕組みだと税務署側で、 「お支払サイト」 から送られてきた納付データと、 確定申告のデータを突合する作業が必要になる。 やっぱり手作業? DX への道は遥か遠い。 個人番号 (マイナンバー) を ID として入力させればいいのにねぇ...

ID とは言えないものの各税務署が「整理番号」を発行していて、 この「お支払サイト」でも「整理番号」を入力することができる。 整理番号の入力は必須ではないが、 入力しておくことで税務署の人たちの突合の手間を減らし、 間違いが起きるリスクを減らすことができるだろうから、 自分の「整理番号」を調べて入力したほうがヨサゲ。

Tax Payment Statement

整理番号は、 e-Tax のメッセージボックスに届く 「確定申告等についてのお知らせ」に記載されている他、 毎年 1月下旬に郵送で届く「確定申告のお知らせ」 「確定申告の納付書」や、 還付金がある場合は「国税還付金振込通知書」にも記載されている。

所得税をクレジットカードで支払う場合、 税額 1万円につき決済手数料 76円+消費税がかかる。 例えば所得税が 99万1円〜100万円の範囲なら税込 8,360円 (つまり 0.84%) もの決済手数料を払う必要があるわけで、 決済手数料より高いポイント等がもらえる高還元率クレジットカード (還元率が 1% 以上) でないと意味がない。

ところが高還元率クレジットカードは、 ポイント等の還元率が高いいっぽう還元を受けられる上限額が低いことが多い。 例えば「Visa LINE Pay クレジットカード」(以下「LINEカード」と略記) は、 支払額の 2% の LINE ポイントがもらえるが、 税金/保険において、1回あたりの支払につき 5万円を超える分は、 ポイント還元の対象外となる。

また、ソニー銀行が発行する「Sony Bank WALLET デビット付きキャッシュカード」 (以下「Sonyカード」と略記) は、 Club S のステータスに応じて最大 2% のキャッシュバックがもらえるが、 寄付、納税、公共料金などの支払ではキャッシュバック合計額が最大 1万円/月までとなる。

どちらの高還元率カードも、 所得税を分割して納付することで上限額を超えてしまうことを回避できる。 LINEカードの場合は 1回 5万円ずつ複数回に分けて払えば 2% のポイントが得られるし、 Sonyカードの場合は (確定申告を 2月に行えば) 50万円ずつ 2月と 3月の 2回に分けて支払うことで各月 2% 満額 1万円のキャッシュバックが得られる。

例えば 140万円の納税を行う場合なら、 2月と 3月に Sonyカードで 50万円ずつ納付し、 3/15 までに LINEカードで 5万円ずつ 8回納付すれば良い。

実際の納付では決済手数料がかかるので、 Sonyカードでは納付額 495,820円と決済手数料 4,180円を、 LINEカードでは納付額 49,582円と決済手数料 418円を払うことになる。 ここで注意すべきなのは決済手数料が 1万円単位で、 1万円に満たない端数は切り上げられるという点。 分割の仕方によっては余計な決済手数料を払うことになってしまう。

例えば所得税額が 12万300円だった場合、 一括で納付すれば決済手数料は税込 1,086円 (=13*76*1.1) だが、 3等分して 4万100円ずつ納付すると決済手数料は税込 1,254円 (5*76*1.1 = 418円ずつ 3回) になってしまう。 3回に分けて納付したときの決済手数料を一括納付の場合と同額にするには、 まず 4万300円を納付 (決済手数料 5*76*1.1 = 418円) し、 残り 2回は 4万円ずつ納付 (決済手数料は 4*76*1.1 = 334円ずつ) すればよい。

というわけで、 所得税 1,390,400円を 9回に分けて 5枚のクレジットカードで納付してみた。 決済手数料は計 11,702円なのに対し、 キャッシュバックやポイント等で計 28,241円の還元を得た。 差し引き 16,539円の利益。

納付日税額手数料支払額カード還元額
2022-02-19495,820円4,180円500,000円Sony10,000円
2022-02-1949,582円418円50,000円LINE1,000円
2022-02-2479,996円668円80,664円Diners403円
2022-02-2540,000円334円40,334円LINE806円
2022-03-0240,000円334円40,334円LINE806円
2022-03-03100,000円836円100,836円SMBC NL3,025円
2022-03-0749,182円418円49,600円LINE992円
2022-03-08495,820円4,180円500,000円Sony10,000円
2022-03-0840,000円334円40,334円Toyota1,209円
合計1,390,400円11,702円1,402,102円28,241円

LINEカードでの支払は、 同じ納税を何度も繰り返すとポイント付与を止められるかも?と思って、 ポイント付与を確認して (さらに LINE証券へ送金して) から次の支払を行った。 幸い今回は 2% 満額の LINE ポイントを得たが、 分割納付する人が増えるとポイント付与ルールが改訂されるかもしれない。 もっとも、2% 還元自体が 2022年4月30日までであり、 5月以降どうなるか不明。

「三井住友カード ゴールド(NL)」(上表では「SMBC NL」と略記) は、 「最大30,000円相当の XRP交換券 プレゼントキャンペーン」(4月30日まで) を行っているので、 支払額の 3% 相当の XRP (暗号資産) が付与される。 また、 このカードには 「年間100万円のご利用で翌年以降の年会費永年無料」特典があり、 この納税で年間利用額 100万円を達成できた。

「ダイナースクラブカード」(上表では「Diners」と略記) は、 この納税で年間利用額が 60万円に達したので、 次年度の年会費が無料になる。 ポイント還元率はわずか 0.5% だが、 24,200円の年会費が無料になるのは大きい。

「TOYOTA Wallet」(上表では「Toyota」と略記) は、 物理的なカードが無いバーチャルカードで、 他のクレジットカード等から残高をチャージして使う。 残高の上限は 5万円なので 5万円を超える支払には利用できない。 実店舗では iD または Mastercard コンタクトレス (Apple Pay のみ) として使える。 支払額の 1% が残高にキャッシュバックされる。

オンライン支払では、 カード名義が 「TOYOTAWALLET MEMBER」 固定なので、 利用できないサイトも多いが、 そもそもこの 「お支払サイト」 はトヨタファイナンス(株)が運営するサイトなので、 同じトヨタファイナンスなのだから使えるかも?と思って試してみたら、 あっさり納付完了してしまった。

残高のチャージを高還元率カード、例えば Sonyカードで行えば、 チャージの際に 2% のキャッシュバックが得られるので、 TOYOTA Wallet のキャッシュバックと合わせて 3% の還元率となる。 上限が同じ 5万円なら、 LINEカードでなく最初から TOYOTA Wallet を使えばよかった。(^^;

Sonyカードはクレジットカードではなく Visaデビットだが、 決済代金が即引き落とされること以外はクレジットカードと変わらない。 もちろん 3Dセキュアに対応している。 高還元率カードとしては群を抜いている (しかも還元はポイントではなくキャッシュバック!) と思うのだけど、 イマイチ認知されていないのは何故だろう?

Filed under: 経済・投資・納税 — hiroaki_sengoku @ 08:15
2021年7月18日

PayPay STEP の新基準をクリアしてみた 〜住民税と健康保険料の支払で1.5%還元〜

今月 7月から PayPay STEP の条件が改訂された。 先月までは合計 10万円以上 PayPay 残高払いすれば、 翌月の還元率が 0.5% から 1% へ 0.5 ポイントアップした。 ところがこれからは合計 5万円以上かつ 30回以上 PayPay 残高払いしないと 1% にならない。 10万円が 5万円に下がったが、 一ヶ月に 30回以上という条件は厳しすぎる。

なぜ還元率を 1% にしたいかというと、 住民税と健康保険料、合わせて 150万円の納付を PayPay 請求書払いで行いたいから。 還元率が 0.5% から 1% へ上がると 7500円ほど還元額が増える。 1% を超える高還元率のクレジットカードは多いが、 たいてい納税等には使えなかったり、 使えても上限額が低かったりする。 一ヶ月に 150万円までの納税等が 1% 還元でできる PayPay は貴重。

6月に健康保険料の第1期分 99,000円を PayPay 請求書払いで納付した。 で、その後ランチで 1133円を PayPay 残高払いした。 これで合計 10万円以上になったので、めでたく翌月 7月の還元率が 1% になった。

Toyonaka PayPay 20% campaign

7月になって請求書払いの還元率が 1% になったのが確認できたので、 住民税と健康保険料の残り (116万円ほど) を全て払ってしまおうと思ったが、 豊中市 x PayPay 20% 還元キャンペーンが始まってしまった。

私は普段 PayPay 残高払いを使わないが、 それは還元率が 0.5% と低いから。 PayPay しか使えないお店では PayPay クレジットカード払いを使うが、 PayPay 残高払いと違って PayPay クレジットカード払いだと PayPay の還元は無いし、 PayPay STEP の回数としてカウントされない。

たいていのお店でもっと高い還元率の支払手段があるし、 PayPay クレジットカード払いなら PayPay に登録したクレジットカードの還元 (私の場合は 2%) が得られる。 わざわざ低還元率の PayPay 残高払いを使う理由は何もない。 が、20% も還元してくれるとなると話は別である。

豊中市に住んでいて、 かつ普段ランチを食べる店や、 最寄りのドラッグストアが 20% 還元の対象店舗なので、 一ヶ月に 30回くらい PayPay 残高払いを使うのは造作もない。 これで 8月も還元率 1% を達成できるメドが付いた。

こうなってくると欲が出て、 さらに上の 1.5% 還元を目指したくなった。 還元率が 1% から 1.5% へ 0.5 ポイント上がると、 住民税と健康保険料の支払で付与される PayPay ボーナスが 7500円増える。 ただし付与上限が 15,000円なので、 1.5% 還元の場合は 1ヶ月に 100万円までの支払しか対象にならない。

1.5% 還元を得るには、以下の 4条件を満たさなければならない:

1) PayPay 支払
合計 5万円以上かつ 30回以上 PayPay 残高払い

2) 次の対象サービスのうち 3つ以上を利用
PayPayモール または Yahoo!ショッピング
PayPayフリマ または ヤフオク!
Yahoo!トラベル
ebookjapan
LOHACO by ASKUL
ただし、 ebookjapan は 300円以上の購入、それ以外は 1000円以上の購入が必要。

3) Yahoo!プレミアム会員登録
あるいはソフトバンクスマホユーザーかワイモバイルユーザー。

4) PayPayアカウントとYahoo! JAPAN IDを連携

条件 1) はメドが付いた。条件 3), 4) は登録するだけの話なので簡単。 私の場合 Yahoo!プレミアム会員登録が 6ヶ月無料だった。 問題は条件 2) である。 いずれのサービスも私は利用したことがない。 もちろん高々 1000円利用するだけだから、 要らないものを買ってもよければすぐ達成できる。 しかし還元率を 0.5 ポイント上げるために 3000円 (ebookjapan を利用する場合は 2300円) をドブに捨ててしまっては本末転倒である。 出来る限り有意義な買物をしたい。

More...
Filed under: 経済・投資・納税 — hiroaki_sengoku @ 08:30
2018年3月8日

配当金領収証の上限は 100万円、複数枚でも簡易書留で送付できるらしい 〜 祝 KLab(株) 初配当 (特別配当 9円) 〜

株式の配当金って、 (特に手続きしなければ) 郵便為替 (正確に言うと、 株式会社ゆうちょ銀行が発行する配当金領収証) を利用することがほとんどだと思いますが、 金額が大きくなっても郵便為替を使うのかなぁ? と日頃からギモンに思っていました。

「領収証」って名称ですが、為替証書の一種です。 株主届出印を押印して郵便局へ持っていくと換金できます (身分証明書の提示が必要)。

そんなある日、 KLab株式会社から 「定時株主総会招集ご通知」 と題する簡易書留郵便が届きました。

「ご通知」 を簡易書留で?
不審に思いつつ受け取って開封すると...
3枚の配当金領収証が出てきました。(@_@)

KLab Dividend

「配当金領収証」の上限って 100万円なんですね、初めて知りました。 配当金の額面は 255万円余り (税引き前は 320万円余り) なのに、 簡易書留 (5万円が上限) で送れるとは、 ちょっとビックリ。

送金できる金額は、 配当金領収証1通につき100万円までです。 100万円を超える送金は、 配当金領収証を発行することで行えますが、 追加する配当金領収証の枚数に応じた料金がかかります。

もっと金額が大きくなると、どうなるんだろう?

その企業の役職員の場合や、法人株主宛の場合は、 さすがに郵便為替ということはないと思うのですが、 個人株主宛の場合は、 どんなに高額でも (事前に手続きしない限り) 郵便為替を使うんですかねぇ?

- o -

18年前の 2000年7月末、 (株)ケイ・ラボラトリー (当時の社名) への出資金として 300万円を振り込みました。

シティバンク銀行 (現 SMBC信託銀行PRESTIA) 虎ノ門支店で、 虎の子の 300万円をおろしたものの、 目と鼻の先にある東京三菱銀行 (現 三菱東京UFJ銀行) 虎ノ門支店まで現金を持っていくのが怖くて (引ったくりに遭ったらどうしよう?)、 840円もの振込手数料を払って振り込んだのが思い出されます。

Citibank JPY3M

1年後にどうなってるか分からない会社 (実際、かなり危うい時期が何度かありました) にポンと 300万円もの大金を投じた当時の私 (← 株式会社日立製作所から転職したばかりの 33歳でお金持ってません) もビックリですが、 それから 18年たって、 出資した額以上の配当金 (税引き前 320万円余り) を出せる会社に成長したのもビックリです。

今回の配当金の総額は 3億3500万円だそうですが、 創業当時の資本金が 3億円でした。

正確に言うと創業時の私の出資分に対する今回の配当金は 162万円 (税引き後は 129万円ほど) です。 創業時 1株 5万円だったので、 私が出資した 300万円は 60株になったのですが、 2004年10月30日に 1株が 2株に分割、 2011年4月21日に 1株が 300株に分割、 2012年1月31日に 1株が 5株に分割しました。 つまり、 創業時の 1株が 3000株になったので、 私の 60株は現在の 18万株になったわけです。 今回の特別配当は 1株あたり 9円ですから、 9円 * 18万株=162万円ですね。

もっとも、 創業当時とは全く異なる事業の会社になってしまいましたが、 全く異なる会社に脱皮できたからこそ今の成長があるのでしょう。

初の配当おめでとうございます。 そして、 ありがとうございました。 株主の一人として、また創業者の一人として御礼申し上げます。

Filed under: 元CTO の日記,経済・投資・納税 — hiroaki_sengoku @ 23:04
2014年10月14日

お金と自由 〜 なぜ貯められないのか? tweets

先日、 立命館大学で 2, 3回生の学生さん達に講義する機会を頂きました。 せっかくの機会なので、 大学ではまず教わることが無いであろう 「お金」 の話をしました。 学生さん達が社会人になる前に、 是非ともお金について考えてみてもらいたいと常々思っていたからです。

お金も時間も足らないはずがない
(中略)
何でお金がなくなるんだろうって、そっちも不思議なんですよ。 日立ってそんな高い給料じゃないと思うんですけど、 入社当時、お金ってそんなに必要じゃなかったから、 あの安月給でもお金が貯まって仕方なかったんです。 お金が貯まらないって人は、 好きじゃないことにお金を使っているんじゃないの? って思いますね。
例えばですね、 すごく不思議だったから今でも覚えているんですけど、 同期入社の人が、入社早々、みんな車を新車で買ったんですよ。 もちろん好きだったら、買ってもいいと思いますよ。 レーサーを目指しているとか、 峠を攻めたいとかっていう人は買ったらいいと思うんです。
でもそんなに好きでもなくて、たまにしか車を使わないような人でも、 みんな車を買ったんで、不思議だなと思いましたね。 私に言わせるとありえないんですけど。 みなさん、好きでもないことにばっかりお金を使っているんじゃないですかね。

自由な時間は学生さんの方が持っていて、 お金は社会人の方が持っているという違いがありますが、 どちらも無駄遣いする習慣を身につけてしまうと、 一生取り返しがつかないように思うので、 ぜひとも人生これからの学生さん達に伝えたいと思っていました。

多くの人が、 学生時代は月に 10万円以下の生活費で暮らしていたにもかかわらず、 社会人になって急に毎月 20万円以上の 「大金」 を手にし、 いままでやらなかった (できなかった) 消費活動に走り、 お金があればあるだけ使ってしまうという悪い習慣に、 あっと言う間に染まってしまいます。 ひとたびこの悪習に取り憑かれると、 給料が上がっても、 上がったぶんだけ消費が増え、 いつになっても金銭面での余裕ができず、 何をするにもお金がネックになって、 お金に振り回される人生を送ってしまいます。 まさに 「お金は悪い主人である」 の典型ですね。

良い召使い or 悪い主人

・ 良い召使い
  - お金は自由を得るための手段
  - お金をどう使うか主体的に考える
  - チャレンジするための強力な道具
・ 悪い主人 (充分なお金が無いと...)
  - お金は生活の手段
  - 使い方を考えるまでもなく出費がかさむ
  - お金のために働く, お金に振り回される
  - お金を失う恐怖で、チャレンジができない
  - お金の不安がストレスに

日頃ストレスを感じると回答した人に、 その理由を尋ねると、 約 40% の人が 「収入や家計に関すること」 と回答しているそうです。 ストレスの原因としては他に、 「人間関係」 「健康状態」 「子育て」 なども挙げられていますが、 例えば、 職場の人間関係にストレスを感じていても辞められないのは、 転職したくても収入が不安定になるのが怖くて踏みきれないことが多かったりするわけで、 様々なストレスの遠因がお金 (が足らないこと) にあると言っても過言ではありません。

当座の生活に困らない程度の充分な蓄えさえあれば、 ストレスの多くは感じずに済み、 お金に振り回されるのではなく、 お金を 「良い召使い」 として使えるようになります。

そんなこと言ったって、 安月給なんだから貯められないのは仕方がない、 って声が聞こえてきそうですが...

充分なお金ってどのくらい?

・ 年収 300万円なら年 100万円以上貯金
  - 独身なら生活費は月 10万円程度で済むはず
・ 30歳までに 500万円
  - 100万円/年 * 5年
・ 40歳までに 4000万円
  - 350万円/年 * 10年
  - 年収 700万円以上あれば誰にでも貯められる
・ もちろん、やりたいことにはお金を使うべき
  - でも、昨今はお金をかけずに何でもできてしまう

独身で扶養家族を持たない人であれば、 学生時代と同程度の生活費で暮らすことが本来は可能なはずです。 しかも学費を払う必要がないのですから、 正社員であれば初年度においても 100万円以上貯めることは簡単なはずです。 その後、昇給もあるでしょうから、 30歳までに 500万円貯めるのは (正社員であれば) 誰にでもできることでしょう。

私は日立の安月給で 30歳までに 1000万円ほど貯めました。 寮費が月 2000円、 朝夕食は寮の食堂で昼食は社内食堂で食べ、 会社にいないときは寮に併設のコートでテニスをしている、 というほとんどお金を使わない生活をしていたからですが (^^)。

なお、 「お金を貯める」 「貯金」 は、 普通は銀行預金のことを意味しますが、 ここでは貯金してまとまった資産をつくり、 それを元手に投資することまで含むものとします。

その後、 給料が増えても生活レベルをあまり上げずに生活費を年間 200万円程度に抑えれば、 増えたぶんは丸々貯金できるはずです。 もし年収が 700万円以上あれば、 40歳までに 4000万円貯めることも決して難しくないはずです (私は 1億円近く貯めました ^^)。 貯金が 4000万円もあれば、 どれだけ生活にゆとりができるでしょうか。 ストレスの多くは感じずに済むのではないでしょうか。

ところが、 この程度の貯金すら、 ほとんどの人にとっては難しいようです。

なぜ貯められない?

・ お金に関する間違った常識
  - 持ち家は一生の財産 (ローンなら負債)
  - 生命保険は社会人の常識
  - お金は使ってなんぼ (うまく投資できればの話)
  - 「お金に働いてもらう」信仰 (貯めるのが先)
・ お金に余裕があると使ってしまう習慣
  - お金を使うことに慣れてしまう
  - 初任給から一ヶ月間が運命の分かれ道
・ 貯めるメリットが分かってない
  - そんなに貯めて何に使うの?

多くの人は貯金するどころか逆にローンという莫大な借金を抱えてしまいます。 家賃を払う人には安い家に引っ越して負担を減らす自由がありますが、 ローンを抱えている人には負担を軽減する自由はありません。 したがって、 「購入 VS 賃貸」 という比較はナンセンスです。 それなのに、 なぜ家賃を払うより 「お得」 と称して高額のローンを組ませるのでしょうか? もちろん、 銀行が儲けるためです。

扶養家族を持たない新卒社員に、 なぜ生命保険が必要なのでしょうか? 高額療養費制度により高額な医療費を支払ったときは払い戻しが受けられるのに、 なぜ医療保険が必要なのでしょうか? もちろん、 保険会社が儲けるためです。

銀行や保険会社以外も、 「お金は使ってこそ価値がある」 「若いときこそお金は自己投資すべき」 などと、 あの手この手でお金を使わせようとします。 でも、 まだ何の経験もない新卒社員に、 お金の有効な使い方が分かれば苦労はしません。 新卒社員にお金を使わせようと躍起になっている人たちが、 真に有効なお金の使い方を新卒社員に教えるでしょうか? もちろん彼らが教えるわけはなく、 教える義理もありません。 彼らが関心があるのは彼ら自身の儲けだけです。

お金を使わせようとする人以外にも、 「お金に働いてもらおう」 「投資に成功する方法」 など、 「儲かる」投資方法を伝授しようとする人もたくさんいます。 彼らがもし真に儲かる投資方法を知っているなら、 わざわざ他人に教えるのではなく自分で大儲けすればいいのにと思いますが、 わざわざ本を書いたり講演したりして、 わずかばかりの印税や講演料を稼いでいるわけです。 変だと思いませんか?

そういう本や講演にいちいちお金を使っていては彼らの思うツボです。 お金を払う前に、 著者あるいは講演者がどれほどの個人資産を持っているというのか、 調べてみるべきでしょう。 決して、 お金が勝手に働いてくれるわけではありません。 自分の頭で考えて汗をかいて有効な投資先を見つけ出し、 あるいは自分で創り出し、 リスクを取って投資し、 その報酬としてリターンを得るのです。

お金はいったん使ってしまうと歯止めが効きません。 使えば使うほど、 財布の紐は緩くなります。 近頃流行りのソーシャルゲームは、 いかにユーザに最初の 100円を払ってもらうかが腕の見せどころです。 いったん 100円を払ってしまったユーザは、 次の 1000円を払うのに躊躇しません。

世界中の大人達が寄ってたかってウブな若者にお金を使わせようと知恵を絞る中、 お金を使うのを我慢するのは至難の業ですが、 さらに周囲の同僚からも、 「ケチ」 だの 「そんなに貯めてどうするんだ?」 などと、 冷たい視線を浴びることになります。 ほとんどの人が、 お金を貯めるメリットを理解していないのだから仕方ありません。

お金を貯めるメリット?

・ お金を「良い召使い」として使える
  - お金 (生活) のためでなく自己実現のために働ける
  - お金の不安という最悪のストレスから解放される
・ お金 (定期収入) を失う恐怖を克服できる
  - 転職に踏み切れる, 何度でも勝負できる
・ 資本家と対等の立場に立てる
  - 自身の労働を売らない自由 (給料交渉では超重要)
階層の壁を越えるチャンス
  - (詐欺ではない本物の) うまい投資話に乗れる
  - まずは最低でも 1000万円。それ以下では相手にされない

労働者は自身の労働力を売らない自由が無い (辞めると生活できなくなる) ばっかりに、 資本家 (会社) との交渉において立場が弱くなってしまい、 (たとえ労働三法の庇護の下でも) 不利な条件を渋々飲まされるわけで、 「辞める自由」ってのは非常に重要だと思います。

また、 お金 (定期収入) を失う恐怖を克服して、 勝負する自由や、 お金を (生活のためでなく) 自己実現のために使う自由も重要でしょう。 ところが、私が 「お金を貯める最大のメリットは、 自由が得られること」 と話しても、 学生さん達にはイマイチ響かなかったように見えました。

お金を貯めるメリットが分からないというよりは、 自由の価値が分からない、 ということなのかも? と講義を終えてから思い当たりました。 (もし次の機会があれば) 今度はお金だけでなく自由の重要性についてもっと話してみようと思います。

(資本主義における) 給料が 「労働の再生産コスト」 に収斂するのは、 労働者に自由がないからであって、 もし労働者が自由を獲得すれば、 労働者が実際に産み出した 「(使用)価値」 に近いところまで給料が上がることが期待できます。 「労働の再生産コスト」 と同程度の給料でできるのは現状維持だけですが、 それより給料が高ければ 「剰余価値」 が労働者の側に蓄積し、 労働者階級から脱出する道が見えてきます。

階級格差は固定されたものではなく、 一労働者からスタートしても、 階層の壁を越えて資本家側に移ることは充分現実的であり、 お金を貯めれば貯めるほど、 その難度は下がります。 お金を貯めて 「壁越え」 に挑戦する人が増えることを願って止みません。 それこそが閉塞感を打ち破り、 活気に満ちた社会を取り戻す唯一の方法だと思うからです。

成功者を妬んで引きずり降ろそうと足の引っ張り合いをするのではなく、 成功者を正当に評価して後に続く人を増やすことこそが、 真の 「トリクルダウン」 (trickle-down) であり、 社会の成長エンジンになりうるのだと思います。

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Filed under: 経済・投資・納税,自己啓発 — hiroaki_sengoku @ 00:00
2012年12月27日

成功しない方法 tweets

「なぜ成功できたか?」を聞きたがる人って多いですよね? でも、そんなこと聞いてどうするのでしょうか。仮に同じことが実践できたとしても、同じように成功できるとは誰も思っちゃいないですよね?

同じように成功するのは無理としても、成功者の話には何らかのヒントがあるんじゃないか?きっとそういうことを期待しているのだと思いますが、考えてみて欲しいのは、成功しなかった人の話は誰も聞こうとしない点。もしかしたら成功しなかった人も成功者と同じことをしていたかも知れません。いわゆる「生存者バイアス」ですね。

例えば、成功できた理由を聞かれて、「自分を信じて、あきらめずに続けたから」などと答えている人をよく見たり聞いたりしますが、こーいう話を真に受けて、素質がない人が自分を信じて突き進んだりしたら、成功確率が上がるどころか、撤退タイミングを逃してドツボにはまってしまうだけです。

まあ、私自身も、「やりたいことをやるのが一番」などと言っていた時期があるので大きなことは言えないのですが、「自分がやりたいことって何だろう?」などと悩み出す人をこれ以上増やさないためにも、ここでは逆に「成功しない方法」について書くことにします。ちなみに「成功しない=失敗」ではありません。失敗は成功の元ですから、むしろ大いに失敗すべきです。

「成功しない方法」を避けたところで成功する保証は何もありませんが、多くのエンジニアが残念なことにこの「成功しない方法」を忠実に実践し、その必然的な帰結として、どんどん成功から遠ざかってしまっています。近年、「エンジニア」という職種が報われない職種になってしまっている一つの原因が、このあたりにあると感じる次第です。

もちろん、いままさに「成功しない方法」を実践している人に対して、このままでは成功からどんどん遠ざかるぞと忠告したところで、そう簡単に方向転換はできないものだとは思いますが、もし、いま「このまま進んでいていいのだろうか?」と思っているなら、少しばかり耳を傾けて頂けると幸いです。

誌面が限られているので、いきなり結論からいきます。「成功しない方法」とは、「選択肢を減らすこと」です。

選択肢と言われてもピンとこないかもしれませんが、人生には分岐点が沢山あります。たとえ八方塞がりに思えるドツボな状況に陥ってしまっていても、その後の分岐点で最適な選択さえできれば、ピンチがチャンスになったりします。ただしそれは、分岐点に選択肢の幅が十分にあればの話です。選択肢が多ければ、リカバリのチャンスがあるということですね。

例えば、選択肢を減らす典型的な方法が、借金をすることです。多くの人が 20〜30年もの長期ローンを組んで家を買ったりしますが、転職したくなったりしたとき、毎月十数万円の返済は重い足枷となるでしょう。借金がなければ思い切って生活を変える選択ができたかもしれないのに、借金があるばっかりに渋々現状維持を続け、ついにはリストラの憂き目に、なんてのはよく聞く話です。

でも、借金よりもっと選択肢を減らす方法があります。それは、自分の気持ちを優先すること。よくいますよね、「これは自分の仕事じゃない」とか言う人 (>_<)。その仕事がどんな仕事か十分に知り尽くしていて、「その仕事をする」という選択肢を除外することが合理的であるなら構わないんですが、多くの人はどんな仕事か知りもしないくせに、「自分の気持ち」だけで判断してしまいます。もしかしたら、やったことがないその仕事に挑戦することが、自分の人生の一大転機になるかも知れないのに。

あるいは、「自分がやりたいことって何だろう?」などと悩む人がいます。「やりたいことを仕事にすべき」などと (私を含めて orz) 多くの人が言ってますが、誰だって最初からそれが「やりたいこと」だったわけではないんです。なにかのはずみに始めたことが、やってるうちに (少し) 好きになり、好きでやるからどんどん熟達し、他の人よりうまくできると余計に好きになり、という好循環にはまって「やりたいことが仕事になる」んです。つまり、最初は好きでなくても自分の気持ちを無視してやってみなきゃ選択肢は増えません。それなのに、悩んでるばかりで始めないから、だんだん歳をとって、やってみるチャンスすら失われてしまいます。

また、多くの人は批判するのが大好きです。昔は飲み屋で、いまだとブログや SNS で、「上司が悪い」「会社が悪い」「社会が悪い」「政治家が悪い」。なぜ人は批判するのでしょう?社会をよくするため?とんでもない、愚痴を言ったって社会は少しも変わりません。誰かを批判すると、その人より自分が偉くなったような気分になれるから、人は批判するのが大好きなのです。

でも、批判によってよくなるのは「自分の気持ち」だけで、自分自身は決してよくはなりません。なぜなら、誰しも成長するには他人から学ぶ他ないからです。でも、「彼はバカだ」と言ってしまったら、その「彼」からは学べません。選択肢がまた一つ減るわけですね。本当に学ぶことが一切無いようなバカなら学ばなくてもいいのですが、ほとんどの場合そうではないでしょう。本当は、学ぶところが一切無いような人に対しては、批判する気にもならないはずです。

自分の気持ちを優先して選択肢を減らす例はまだまだ沢山あるのですが、誌面が尽きたのでこの辺で... もしこの手の話に興味があれば、私のブログ (「仙石浩明」で検索!) を参照してください。

- o -

以上は、 Software Design 誌に寄稿したエッセーです。 2013年1月号 第2特集 「キーパーソンに聞く 2013年に来そうな技術・ビジョンはこれだ!」 に掲載されました。 技術評論社さんの許可を得て、 全文を転載しています。

Filed under: 元CTO の日記,経済・投資・納税,自己啓発 — hiroaki_sengoku @ 10:20
2009年6月24日

初めて株の「カラ売り」をやってみた ~ 年度末に日経225 買い支えが入る中、見なし値上位の赤字企業を狙う hatena_b

私は大学生の時から株の売買をやっている。 といっても、 所詮は理系の学生が興味本位でやっていたことなので、 売買額も「お小遣い」の範囲。 初めて証券会社の店頭へ行ってみたのが ブラックマンデー (1987年10月19日) の記憶も生々しい 1988年初め。 その後バブル崩壊、平成金融不況、ネットバブル崩壊を体験し、 そして今回の世界恐慌を体験中であるが、 なにせ投じている金額が微々たるものなので、 損失もさほどではない。

いま振り返ってみると、 日経225 (日経平均株価) が最高値をつけたのは 1989年12月29日のことなので、 右肩上がりだったのは株を始めてわずかに 2年間で、 その後 20年間は右肩下がり、 しかも今現在は 1988年のスタート時点の半値以下に下がっている。 これでは長期投資では儲かるはずがないということにようやく気付いたが (遅すぎ! ^^;)、 かといって短期売買するほど相場に思い入れがあるわけではなく、 マーケット情報のウォッチに時間を費やすより、 コンピュータをいじっていたい性分なので、 株売買で儲けられないのは当然の成行。

ところが、 リーマンショックがまだ癒えない 2009年3月11日、 日経225 が今年 2番目の上げ幅 (3/11当時) を記録した。 別にマーケットをウォッチしていたわけではなく、 フツーに報道していたので多くの人が気に留めたはず。 この反騰を受けて報道では景気の先行きについて楽観的な見方を繰り返していたが、 「100年に一度」の世界恐慌が、 この程度の下げで V字回復するわけがないということくらい、 経済に疎い私だって分かる。 ということは株価を上げたいと考えている人が無理に買い上げているに違いない。

もちろん、テレビが率先して景気の先行きが暗いことを吹聴しては、 景気が余計に悪くなるのであえて楽観論のみ強調しているのだろうが、 甘い見通し報道を真に受けて投資したりすれば痛い目にあう、 ということは 20年間にわたって高い授業料を払って学んだところ。

株に関するブログなどをテキトーに拾い読みしてみると、 年度末である 3月に日経225 がある水準を下回ると、 金融機関などの決算上よろしくないことが起るらしく、 そのため誰かが株価を支えているということらしい。 真偽のほどは分からないが、 あまり健全とは言えない株価上昇だということだけは私にも分かる。

ムリヤリ買い上げた株価はいつかは下げるはずで、 しかもこれが決算対策ということであるなら、 4月に入れば上げた分が丸々下がる可能性が高い。 株価の上げ下げなんて、 当たるも八卦当たらぬも八卦の世界だと思っていたのだが、 今回ばかりは「無理な買い上げ」という原因がはっきりしているだけに、 ほぼ確実に下がりそうである。

というわけで、生まれて初めての空売り (からうり, 株を所有していないのに売る契約を結ぶこと) に挑戦してみることにした。 3月末に空売りするぞっと、 思った即その場で、 (普段利用している) ネット証券のサイトの信用取引方法の解説ページに目を通した。 ネットで申し込めば審査が行なわれ、 審査OK ならば数日後に取引開始できるらしい。 審査で落ちれば仕方がないが、 とりあえず申し込んでみるだけ申し込んでみようと、 これまたその場で申込みを終える。 これが 3/11 (水) 20:35 のこと。 大幅反発のニュースを知ってからここまで 1時間も経っていない (^^;)。

驚いたことに 3/13 (金) 03:45 には信用取引口座を開設可能とのメールが来ていた。 まだ 31時間しか経っていないのだが... こんなに早く済むとは、どんな審査なんだろうか? 結局 3/14 (土) には取引可能状態になっていた。

次の問題は、 どの銘柄を空売りするか? まず第一に、赤字企業であること。 大恐慌といえど儲かっている会社も中にはあるわけで、 そんな銘柄を空売りした後に株価が上がってしまっては目もあてられない。 むこう 1年くらいは赤字が続く予想が出ていながら、 株価が堅調に推移している不自然な会社を探すことにした。

第二に、日経225 算出の際の「みなし値」が高いこと。 日経225 は各銘柄を「50円換算」したときの株価を、 単純に合計して平均値を求めている。 だから「みなし値」が高いほど日経225 への影響度が高く、 日経225 をつり上げようとする人にとっては好都合となる。 ちなみに日経225 の騰落にどのくらい影響を与えたかを寄与額と呼ぶらしいが、 見なし値が高い銘柄ほど小幅の株価上昇で寄与額が大きくなる。 寄与額と株価変動額との比率を寄与率と呼び、 一般に値嵩株 (ねがさかぶ, 株価が高い株式) ほど寄与率が大きくなる。

また、 時価総額が大きい銘柄だと、 流通している株数も多いだろうから、 少々の資金では株価が動きにくいと思われる。 ということは日経225 をつり上げようとする人が狙うのは、 少ない資金でも値が飛びやすい銘柄なのだろう。 なので第三の条件として、 あまりに有名な超大企業は避けることにした。

ちなみに、 専門家ぶってエラソーに 「みなし値」 だの 「寄与率」 だの専門用語を振り回しているが、 土・日にネットサーフィン (死語) してニワカ仕込みで覚えた知識に過ぎない。 今まで信用取引をしたことがない全くの素人 (=私) でも、 「空売りしよう」と思った直後に一夜漬けで勉強できるのが、 「知の高速道路」たるインターネットのいいところ。

まず「みなし値」が高い順に日経225 採用銘柄を並べてみる。 まずは上位 10銘柄。 もちろんいつの時点での株価を用いるかによって順位は入れ替わるが、 だいたいこんな感じ:

コード銘柄名利益予想
9983ファーストリテイリング54000
6954ファナック26500
6971京セラ12000
4063信越化学130000
7267本田技研80000
9433KDDI260000
7751キヤノン128500
9984ソフトバンク115000
6762TDK2600
8035東京エレクトロン-43000

「利益予想」は来年 2010年度の予想額 (単位 百万円)。 大恐慌にも関わらず意外 (?) に黒字予想の企業が多い。 唯一赤字予想なのが、東京エレクトロン。 実はこれを調べるまで、 東京エレクトロン という会社が日経225 採用銘柄であることはおろか、 そもそも何をやってる会社かさえ知らなかった。 半導体製造装置の開発・製造会社らしい。 半導体製造というと不況業種というイメージを私は持っていたが、 実際あまり芳しくない業績のようだ。 そう簡単には黒字になったりはしないだろう。

ところが、 株価は 3/9 に 2875円の安値をつけた後、 一気に上昇している。 これはいかにも怪しい。 素人の私にも怪しさが伝わってくるくらいだから、 多くの人が怪しいと思ったのだろう。 空売りがどんどん膨らんで、 信用売残が信用買残の 10倍にも達している。 つまり多くの人が空売りを仕掛けているということだ。

ちなみに、 「みなし値」の 10位以降は以下のようになる。

コード銘柄名利益予想
4543テルモ34500
9735セコム56000
4502武田薬品298000
7203トヨタ自動車-750000
4503アステラス製薬172000
6857アドバンテスト-15000
4523エーザイ55400
4704トレンドマイクロ18400
6367ダイキン工業33000
9613NTTデータ45000
3382セブン&アイHLDGS121000
4901富士フイルムHLDGS-54000
6758ソニー-140000

以上 23社が、 日経225 に占める構成比 1% 以上の企業群。 1/225 = 0.4% なので、日経225 に与える影響は平均的銘柄の倍以上。 みなし値 1位のファーストリテイリング (ユニクロの会社) に至っては 構成比が 5% を超えていて、 みなし値最下位の企業群の 100倍以上の影響力を日経225 に対しておよぼしている。

構成比 1% 以上の企業のうち、 トヨタやソニーは超大企業なので除外すると、 赤字予想は東京エレクトロンの他は アドバンテスト富士フイルムHLDGS だけ。 いずれの株価も東京エレクトロンと同様、 3月上旬に安値をつけたあと一気に上昇していてとても怪しい。

というわけで、 狙いを 「東京エレクトロン」「アドバンテスト」「富士フイルムHLDGS」 に絞って、 しばらく株価をウォッチしてみることにした。 参考までに昨年 3月の株価を調べてみると、 東京エレクトロンは 2008年 3/26 に 6580円の高値をつけた後、 翌 3/27 に一気に下落している。 アドバンテストは 3/25 に高値をつけているが、 4月に入ってもあまり下落していないし、 富士フイルムHLDGSはむしろ 4月に入って上昇している。

空売り決行は 3月最終週、 特に 3/24 か 25 に狙いを定めた。

ところが 3/24 (火) は、 朝から学生さんを対象とした会社説明会を開催予定だった。 しかもその直後に KLab (株) の臨時株主総会が開催される。 これは人様の株なんか売ってないで、 自分の会社の心配をせよ、 という天の声なのか? もちろん説明会も総会も参加しないわけにはいかず、 マーケットをウォッチするのは物理的に不可能だった。 よりによって会社説明会と臨時株主総会の日程にぶつかるとわ... (ついでに言うと、総会の後には某出版社の取材が入っていた)

仕方ないので会社説明会に出る前に、 指値で信用売り注文 (空売り) を出しておくことにした。 寄り付き状況を確認した後、 まず 9:09 に東京エレクトロンを 4030円の指値で注文を出したら、 いきなり 9:10 に約定してしまった。 初めての空売りがこんなにあっさり出来てしまうとわ... このまま株価が急騰するとマズイと思い、 すかさず 9:14 に 4180円の指値で追加注文を出す。 ところが株価は 4100円から下がりはじめた。 4180円になる気がしなかったので、 9:24 に 4090円の指値で注文を出した後、 会社説明会へ出る。

会社説明会の後、 ほとんど間をおかず (スーツに着替える時間だけでいっぱいいっぱい) 臨時株主総会。 総会が終わると後場ももうあとわずかである。 結局 4090円までは戻らず、 出来たのは 9:10 の 4030円の指値注文のみであった。 「お小遣いの範囲の売買」なので、 もちろん株数は最低売買単位である 100株だけ。 信用取引では際限のない損失拡大を防ぐことがなにより大事であるので、 売値より 1000円株価が上がってしまったら、 つまり損失が 10万円に達したら、 問答無用で損切り (ロスカット) しようと決めている。

翌 25日も指値空売り注文を出していたのだが、 株価は戻らず結局出来なかった。 マーケットの状況も気にはしていたのだが、 実は 25日の朝は HP ML115G5 (Athlon 1640B マシン) が 11750円 (送料・消費税込) で売られていたのを見つけてしまい、 衝動買いしてしまった。 劇安PC によってマーケットへの集中力が削がれてしまった感は否めない。 このマシンはサーバ仕様と言いつつ PCIe x16 スロットがあるので、 普通のデスクトップマシンとしても充分使える。 また ECC 無しメモリも使えるので安価なメモリを利用できる。 だから週末は秋葉へ行ってグラフィックボードとメモリを買おうなどと考え出すと、 マーケットのことなど、 もうどうでもよくなってしまう (^^;)。

東京エレクトロンはその後 3/27 に 4120円、 いったん下げた後 4/2 に急騰した。 なぜ 4 月に入っても上がり続けるのか? (後で知ったが G20 期待だったらしい) と思いつつも、 ここで慌てて手仕舞するようでは信用取引をする意味がない。 いったん空売りを行なったからには、 ロスカット条件に達するまでは徹底して売り続ける必要がある。 4/2 に 4090円で、追加の空売りを行なった。

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Filed under: 経済・投資・納税 — hiroaki_sengoku @ 08:19
2008年4月7日

なぜ、「購入 VS 賃貸」 という比較がナンセンスなのか? hatena_b

分譲マンション (あるいは一戸建) を (ローンで) 購入するのと、 賃貸マンションを借りる (賃借) のと、どちらが得か? という比較の話をよく聞く。 大抵は、ケース・バイ・ケースで片付けてしまうか、 「購入派 VS 賃貸派」などと個人の価値観に帰着させてしまうことが 多いようである。 例えば、 「ローンも家賃も月々の支払いは似たようなものであるが、 購入の場合はローンを完済すれば資産になるのに対し、 借りる場合は家賃を永遠に払い続けなければならない。 一方、 購入の場合は地価が下がったり住環境の変化などのリスク要因もあるから、 購入が得とも限らない」等々...

本当に、ケース・バイ・ケースあるいは価値観の問題なのだろうか?

まず注意しておきたいのは、 「購入」と「賃借」は、対立概念ではないということ。 当たり前の話だが、 「購入」の反対は「売却」であり、 「賃借」の反対は「賃貸」である。 マンションを購入しても、 必ずしもそこに住まなければならないわけではない (税制などを考えれば住む方が得であるケースも多いが)。 購入するにしても借りるにしても、 どこかに「住む」はずであるから、 共通部分である「住む」は除外して比較を行なうべきであろう。

どうやって「住む」を除外したらよいか?

マンションを購入して (他者に賃貸するのではなく) 自らそこに住む場合、 自分自身に対して「賃貸」したと考えればよい。 つまり「賃借人」である自分が、「大家」である自分に家賃を払ってそこに住む、 と考えるわけである。 このように考えれば、 「自宅としてマンションを買う」という行為は、 「マンションを買って (自分自身に) 賃貸」という行為 (つまり不動産投資) と、 「マンションを賃借して住む」という行為に分解できる。

買う ⇒ 不動産投資 + (自分から)賃借して住む
借りる ⇒ (他人から)賃借して住む

このように考えれば、 「賃借して住む」の部分は両者に共通であるから除外して比較することができる。

つまり「買うか? 借りるか?」という比較は、
「不動産投資を行なうか? 行なわないか?」という比較になる。

4000万円の新築マンションを購入するとして、 頭金を800万円(購入価格の2割)、 残り3200万円を金利3%、 35年返済で借りるとした場合、 月々の返済額は12万3000円となる。 頭金800万円を加えた総返済額は約5970万円。 これに固定資産税、維持管理費等の支払いが約1700万円。 結局7670万円の支払いをして、マンションが自分の資産となるわけである。

ここで、 (自分自身に) 月額 12万3000円の家賃で賃貸すると考える。 もちろん家賃の額は任意に設定して構わないのであるが、 ここでは簡単化のため、 家賃をローンの月々の返済額と同額の 12万3000円に設定してみる。

4/19追記: 任意に設定して構わないといっても、 賃借人としての自分が「払ってもよい」と思える額であることが大前提である。 どーせ自分自身に払うのだからいくら高くても懐は痛まない、 などと考えてはいけない。 月々のローン返済額と同程度の家賃を払うくらいなら購入したほうがお得 (つまり 12万3000円以上だと払いたくない)、 と考える人が多数派であるようなので、 設定する家賃は月額 12万3000円を上限とすべきだろう。

すると、賃借人 (つまり自分) から払ってもらった家賃を、 そのままローンの支払いにあてることができて、 固定資産税と維持管理費等の支払いだけでマンションが自分の資産になるわけである。 つまり「大家」としての自分は、 頭金800万円と固定資産税と維持管理費等の1700万円の合計 2500万円だけで、 (35年後には) 4000万円のマンションを手にいれることができる。

おいしい話のように聞こえるだろうか?

もしこの話がおいしい話に聞こえるなら、 マンションは購入すべきという結論になるわけだが、 よく考えてみて欲しい。 まず、 35年後に 4000万円の価値をもっているかどうかは、 そのときのマンション相場次第である。

ここで考慮しなければならないのは、 「果たして地価が今後どのように変動していくか」である。 地価が毎年上昇し続ければマンションの資産価値も上がり続けるので問題ないが、 今の景気を考えると地価の上昇はしばらく期待できず 「地価はもう上がらない」という意見が多い。 正直そのあたりが誰にも明言できないところに 「買うか?借りるか?」の議論がいつの時代もされ、 結局「どっちなの?」に終始してしまうのである。
ここで地価が変動しないと仮定すると、35年後の資産価値は2510万円となる。

地価が変動しないと仮定すると、この話は 「頭金800万円と固定資産税と維持管理費等の1700万円の合計 2500万円で、 (35年後には) 2510万円の資産価値を持つマンションが手にはいる」 という話に変質してしまう。

おいしいと思えた話に影が差してこないだろうか?

とはいえ、 2510万円の資産価値を持つマンションが (35年後とはいえ) 手に入るのだし、 もしかしたら地価が上昇してマンション相場が大幅に値上がりするかも知れない。 先行きが見えない株に投資するよりは、 大化けするかもしれない「不動産」に投資したい、 と判断する人もいるかもしれない。

賃貸の場合は頭金800万円と税金等の1700万円も不要なので、 購入しなければ2500万円の現金資産が残り、 結局は地価が変動しなければどちらも同じなのである。

「結局は地価が変動しなければどちらも同じ」だから、 ケース・バイ・ケースあるいは価値観の問題ということなのだろうか?

実はそうはならない。

なぜなら、 「頭金800万円と固定資産税と維持管理費等の1700万円の合計 2500万円で、 (35年後には) 2510万円の資産価値を持つマンションが手にはいる」 という理解は間違っているからだ。

支払額が合計 2500万円と思った人は、 800万円を (例えば) 銀行に預けておけば、 (低金利の昨今とはいえ) 35年もたてばそれなりの利息がつくということを忘れている。 毎年払い続ける固定資産税と維持管理費等だって、 総額 1700万円も払うわけだから、 同じ金額を 35年間もかけて積み立てていけば 利息が加算されて 1700万円を大きく上回る額になる。

不動産投資を行なうか、行なわないか、という比較をするのであれば、 不動産投資を行なわない場合に 同じ元手 (総額 2500万円) を 他の投資先へ振り向けた時の収益を含めて考慮しなければ、 フェアな比較とは言えないだろう。 他への投資でどのくらいの利回りが期待できるかは投資先に依存するが、 ここでは簡単化のため、 (ローン金利と同率の) 3% の利回りが期待できると仮定してみる。

最初に 800万円を投資し、 1700万円を毎年均等に (つまり毎年 49万円ずつ) 追加投資して、 3% の利回りがあると仮定すると、 35年で 5214万円にもなる。

つまり、

新築価格が 4000万円のマンションを 35年ローンで買ってもいいのは、
ローン完済時に 5214万円以上で売却することが期待できる場合に限られる。

あるいは、(2/3 追記)
値上がりが期待できないのであれば、 自分自身に支払う家賃は月額 12万3000円ではなく、 月額 14万円ということになる。 なぜなら、家賃を 1万7000円増額することにより 年間 20万円を積み立てることができて、 値上がり期待分 1200万円を補填できるからである。
つまり、
「月々のローン返済額と同程度の家賃を払うくらいなら購入したほうがお得」 という考え方は、 ローン完済時に値上がりが期待できない (築35年のマンションを新築価格以上の値段で売却できるだろうか?) 状況下では正しくない。
一般的には、 値上がりどころか老朽化などの理由により 2510万円程度に値下がりしてしまうので、 「補填」すべき額は 2700万円にもなり、 「みなし」家賃は 15万8000円となる。

「土地神話」が崩れた今、 マンションを買うという行為は、 「投資」以外のなにものでもない。 そして、 「個人の投資は必ず余裕資金ですべき」という鉄則は なにも「株投資」の場合だけに当てはまるものではなく、 どんな投資についても当てはまる金言である。

結構な高金利で借金して得たお金で投資する人がいたらどう思うだろうか? 「借金して得たお金」というのは 「余裕資金」から最もかけ離れた資金と言えるだろう。 そんな投資はやめておけ、と誰しも思うのではなかろうか?

しかしながら多くの人が行なっている 「ローン組んでマンションを買う」という行為は、 「借金して得たお金で投資する」という行為となんら変わらないのである。

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Filed under: 経済・投資・納税,自己啓発 — hiroaki_sengoku @ 08:30
2006年5月12日

資産を増やそう! 技術者にとっての資産とは?

資産とは、お金を入ってくる源泉。 お金が出ていくほうは負債。 持ち家を資産と思っている人も多いが、 持ち家に自分で住んでしまえば、 修繕費などでお金が出ていくことはあっても、 お金が入ってくることはない。だから負債。

金持ち父さん貧乏父さん
ロバート キヨサキ (著), 白根 美保子 (翻訳)

で述べられているように、 お金のしくみはいたって単純である。 少なくとも普段、技術者たちが相手にしている高度な技術に比べたら、 遥かに遥かに単純である。 負債を減らして資産を増やせば、 入ってくるお金が増える。 ただ、それだけ。

こんなに単純な理屈なのに、 多くの人は、 資産を増やすためにお金を使うより、 むしろ負債を増やすことにお金を使ってしまう。 例えばローンを組んで持ち家を買ったりする。 どうみても世間一般の人より遥かに頭がいいように思われる技術者たちが、 ことお金に関しては全くといっていいほど 頭を使おうとしないのはなぜなのか。

しかも、技術者の多くは、 他の人達が望むべくもない資産を持っている。

それは「スキル」。

しかも、わずかな投資(努力)で大幅に増やすことができる特異な資産である。 なぜ、この資産をもっと効果的に増やそうとしないのか。 なぜ、目先のキャッシュフロー (安月給) に目を奪われて、 自身の資産形成をおろそかにするのか。

Filed under: 技術者の成長,経済・投資・納税 — hiroaki_sengoku @ 23:55