創業から 6年、KLab は大きく発展しました。5人で始めた会社がもうすぐ200人に達する勢いです。
昨年 9月には
子会社 KLabセキュリティを設立し、
セキュリティ分野への本格進出を開始しました。
でも私にとって会社の発展以上に重要なのは、
KLabグループの発展にあわせて
私自身も大きく変わることができたということであり、
また一緒に働く技術者たちも大きく成長したという点です。
もちろん、技術者が成長すればそれだけでいい、
というほど会社は単純なものではありませんが、
会社というものは、役員が3人いたら3人、5人いたら5人が皆違うタイプで、
それぞれの立場から会社のあるべき姿を提案し、
それらをミックスして一番いい会社を創るべきだと思います。
私は技術者だから技術者サイドから会社のあるべき姿をいつも考えています。
私は KLabグループを、これからももっと
「技術者の成長にとって一番役に立つ会社」
「技術者が自ら伸びていくことができる会社」にしたいと思っています。
そして、技術者達が KLabグループを踏み台にして次のステップに進むのもいいし、
KLabグループに残って、KLabグループの将来に貢献してくれてもいい。
そこに一番重きをおきたい。
その為にこだわっていることを3つご紹介します。
面白いことは許可します
「コスト的にどうかな?」と思うことでも、
新しいことであれば積極的にやっていきたいと考えています。
「トップの理解がない」「上司の説得が大変」という技術者の話をよく耳にしますが、
KLabグループでは
そんなことはありえません。それは、私が上司だからです。
実際に言い出しっぺは私自身が一番多くて、
メンバーから「こんな無茶しないで下さい」と言われますが・・・。
上司を止めることはあっても、止められることはない。
技術者にとって、積極的にやりたいことがやれる、
挑戦できる環境です。
さらに、現在の業務とは直接関係ないことにもどんどん挑戦してもらうため、
勤務時間の10%以内であれば上司の許可を得ずに何をやってもいいという
「どぶろく制度」を作りました。
ある程度メドがつくまでは「こっそり」技術を仕込んでもらって、
もしうまくいったら発表してもらってみんなで事業化を考える。
モノにならなかったとしても構わない、
失敗を恐れず挑戦する意欲を大切にしたいと思います。
いかに高負荷に耐えうるサーバを作ることができるか、
いかに経済的に運用することができるか、
というクラスタリングサーバの研究開発は、
今でこそ KLab の事業の柱の一つとなっていますが、
最初はケータイJavaアプリを作る合間に「こっそり」仕込んだ技術だったのです。
業務とは直接関係ないことだったが好きだからとやってるうちに、
いつのまにか KLab のコアコンピタンスになってしまったわけで、
「どぶろく」精神の典型例と言えるでしょう。
また、セキュリティ分野への進出も、
最初のきっかけは趣味で作ったプログラムでした。
このあたりの経緯は、
「なぜケータイ・コンテンツ開発から、セキュリティへ転身したのか?」に書いています。
── KLab 本体はケータイ・コンテンツの開発会社です。なぜそこから、セキュリティ分野に転身したのでしょうか?
これは誤解されやすい所ですが、私は元々セキュリティ好きなのです。
ケータイ・コンテンツの開発に関わった方が、たまたまです。
── 「元々はセキュリティ好き」とのことですが、セキュリティというと制限、規則、監査など不自由なイメージがあります。
これが好き嫌いの対象となるのが今一つイメージが湧きにくいのですが…。
私の場合は「セキュリティを切り口にしてコンピュータを理解して楽しんでいた」、
もっと平たく言うと「OS をいじめて遊んでいた」というパターンです。
初めて UNIX に接したのは 87 年頃、まだ京大の学生だった頃でした。
その頃の UNIX はセキュリティ意識も高くなく、今と違って、つっこみどころが満載でした。
そういうつっこみどころを思考実験で探してみたり、実際につついてみたりして、
OS やネットワークについての実践的な知識を得ていました。
「KLabセキュリティ CTO、仙石浩明に聞く」 から引用
今までの事業領域は無視してもらってもかまいません。
IT 以外は微妙ですが、「技術」という名がつけば何でも OK です。
「そこはお前のやることじゃない」と言われることはありません。
私が CTO である以上、
やる気があるなら次々に新しい研究開発ができます。
そして、そこで積み重ねた技術力次第で CTO も目指せます。
それが KLab という会社なのです。
技術者の上司は技術者であるべきです
これは私のこだわりで、ずっと言い続けていることです。
技術者が「技術だけでどこまでも上っていける会社」
「自分のキャリアパスを明確に描ける会社」それが理想。
出世すると技術がなくなったり、上司がいつの間にか技術者でなくなると、
「いずれは技術を捨てなければならない」と思ってしまう。それはありえない。
事業分野の広がりにともない現在は事業部制をしいていますが、
本当に技術が好き、という人のためには、
研究部門である Kラボラトリー (旧社名を引き継いでいます) があり、
私が直轄しています。
また、KLabセキュリティは今のところセキュリティ分野に特化しているので
機能組織となっており、技術部門は私が統括しています。
さらに、上司が単に技術者であるというだけでなく、
上司が部下を技術者としての実力で評価できるということを重視しています。
これは、「彼は、このあたりの分野が優れている」などという概要評価ではなく、
例えばソースコードまで見て、優れている点を具体的に評価でき、
さらに改善ポイントもアドバイスできるということです。
一般の会社では、過去の功労者が上にいる企業が多いようですが、
でも彼らは、過去の技術に関しては優れていても、
必ずしも今の技術に関して精通しているとは言えません。
KLabグループの場合は、
これからの技術で部下を引っ張っていける人でないと上司にはしません。
上司でも、新しい考え方や新しいパラダイムに適応できない人は、
だんだん退いてもらうことになります。
世の中的には、上流工程を重要な仕事、
下流工程を単純労働と捉える見方があります。
下流は新人がやる仕事と見なされ、
プログラミングをほとんど経験していない人がプログラマーの上司だったりする。
これではマトモな評価ができるはずはありません。
下流には下流なりの難しさがあり、
下流の得意な人たちも、上流と同様に評価されるべきです。
KLabグループには、上流が得意な上長と下流が得意な上長の両方がいますので、
下流だから上流より地位が下、ということは全くありません。
KLabグループは真の実力主義・能力主義の会社です
成果主義じゃなくて実力主義・能力主義。
どれだけ能力を持っているか、ポテンシャルも含めたところで評価します。
そして能力がある人はドンドン抜擢。能力が開花した時点で、
いきなり倍の給与にしてもいい。
後から来た人が上司を追い抜くのは日常茶飯事です。
多くの会社は成果主義に走りがちです。
それは上司が技術をわかっておらず、技術者をきちんと評価出来ないからです。
部下のやっていることが技術的にどこまで凄いのかを、
評価できないから数字で出るものを信じるしかなく、
「より利益(率)の高いものをやったか?」
ということがメインの指標になってしまいます。
技術というより「いかにコストダウンするか?」
「いかに外注をいじめて安く作るか」
が注力ポイントになってしまい、
技術以外の方向にベクトルが向いてしまう。
そんな会社にはなりたくないし、したくない。
直接成果に結びつかないかもしれないが、新しい知識を貪欲に吸収し、
新しいことをドンドン考え、
自分の考えていることを積極的に発表して皆の役に立つ。
それを重視したいと考えています。
研究開発は会社の中ではコストセンター。
どのみちコストなんだから、お金で換算したくない。
その人の能力・実力で評価したい。
だからトップに技術者がいなければならないし、
技術者の立場から、他の役員と闘うことこそが
CTO (最高技術責任者) の役割だと思っています。
KLab株式会社
取締役 CTO
Kラボラトリー 所長
仙石浩明
KLabセキュリティ株式会社
取締役 CTO
技術本部 本部長
仙石浩明