人の上に立とう、といっても、威張りちらしたい、というわけではない。
相手より高い視点を持てるよう努力しよう、ということだ。
大局的な判断ができる人がリーダシップをとり、
局所的な判断しかできない人は、その指示に従うことになる。
上司が指示を出し、部下がそれに従う、というわけではない。
もちろん指揮命令系統が決められている場合は、
そこから逸脱するのは難しいかも知れないが、
職種が違う場合はどうだろう?
セールスがお客様の言葉を錦の御旗よろしく振りかざして
マーケタへマーケティング戦略を指示し、
マーケタが製品のあるべき姿をプランナへ指示し、
プランナが製品仕様を決めて技術者に指示する。
こうした指示の連鎖は、よく見かける光景だが、
セールス、マーケタ、プランナ、技術者は、
本来は上下関係はないはずである。
なぜこのような指示する側とされる側に分かれてしまうのか。
で、上下関係をひっくり返してみようと思った。
技術者である私が、セールスやマーケタやプランナに指示を出してみる。
もちろん、いきなり指示を出そうと思っても、
何を指示すべきか分からないから、準備が必要である。
まず営業同行して、セールスの人達がお客様と何を話しているか観察。
ところがお客様の顔がいかにも興味なさそうなのに、
とうとうと自社製品の説明を立て板に水のごとく話している姿を目撃。
う~ん、素人の私にだって、こういう営業方法が
論外なことくらいは分かる。
もちろん優秀な営業マンもいるのだが、
私の目から見てもダメダメな人がいるというのは発見だった。
つぎにマーケ本部の定例ミーティングに参加してみる。
最初のうちは全貌が把握できていないのでおとなしくしているが、
すぐに我慢ができなくなった。
自社のポジションがまるで理解できていない。
弊社は大企業とは違うのだ。
弊社のロゴを見たって誰も弊社のことを思い浮かべたりはしない。
それにいま攻めようとしている市場は導入期である。
新しいカテゴリを作ろうとしているのだから
成熟期の商品と同じ攻め方でいいわけがない。
もちろん優秀なマーケタもいるのだが、
マーケティングの教科書を一読だけで分かるようなことを押さえずに、
見よう見まねの SWOT 分析などをして
マーケタ気取りの人がいるというのは発見だった。
プランナは、技術者に近い。技術者と同じく「作る」職種である。
仕様を考えつつどんどんプロトタイピングして実ユーザの声を聞く、
という開発手法もあるわけで、
プランナと技術者は対等の関係になることも多い。
セールスやマーケタは、「売る」職種である。
技術者とは別人種と言ってもいいだろう。
だからといって「売る」職種が、「作る」職種よりも
立場が上というわけではない。
単に「売る」職種の方が広い視野を持ちやすく、
「作る」職種が、ともすると目先の問題に固執しがち
というだけのこと。