IT技術者への手紙

はじめまして、 (株)ケイ・ラボラトリーの仙石です。 携帯電話の限られたリソースの中でも軽快に動く、 キロバイト単位の Javaプログラムを作ろうと、 ケータイ、軽快、キロの「K」にちなんで ケイ・ラボラトリー (略して Kラボ) は 2000年の8月に設立されました。

あれからもうすぐ4年、ケータイは我々の生活により深く浸透し、 それにともなって Kラボのビジネスも拡大を続けています。 当初はケータイJavaアプリを 1 byte づつ職人芸で開発する少数精鋭部隊、 という趣きだったのが、今や 50人を超える技術者が、 ケータイの枠組みを大きく超えて、 Webアプリケーション、 クラスタリングサーバ、 インターネット、セキュリティなど様々な分野の研究開発に取り組んでいます。

この 4年間で Kラボは大きく発展しました。 毎年売上規模が倍になっていますから、4年で約16倍です。 でも私にとってそれ以上に重要なのは、 Kラボの発展にあわせて 私自身も大きく変わることができたということであり、 また一緒に働く技術者たちも大きく成長したという点です。 もちろん、技術者が成長すればそれだけでいい、 というほど会社は単純なものではありませんが、 会社というものは、役員が3人いたら3人、5人いたら5人が皆違うタイプで、 それぞれの立場から会社のあるべき姿を提案し、 それらをミックスして一番いい会社を創るべきだと思います。 私は技術者だから技術者サイドから会社のあるべき姿をいつも考えています。

私はKラボを、これからももっと 「技術者の成長にとって一番役に立つ会社」 「技術者が自ら伸びていくことができる会社」にしたいと思っています。 そして、技術者達が Kラボを踏み台にして次のステップに進むのもいいし、 Kラボに残って、Kラボの将来に貢献してくれてもいい。

※本音を言うと、残ってもらえるとうれしいですが・・・。

そこに一番重きをおきたい。

その為にこだわっていることを3つご紹介します。

面白いことは許可します

「コスト的にどうかな?」と思うことでも、 新しいことであれば積極的にやっていきたいと考えています。 「トップの理解がない」「上司の説得が大変」という技術者の話をよく耳にしますが、 Kラボでは そんなことはありえません。それは、私が上司だからです。 実際に言い出しっぺは私自身が一番多くて、 メンバーから「こんな無茶しないで下さい」と言われますが・・・。 上司を止めることはあっても、止められることはない。 技術者にとって、積極的にやりたいことがやれる、 挑戦できる環境です。

さらに、現在の業務とは直接関係ないことにもどんどん挑戦してもらうため、 勤務時間の10%以内であれば上司の許可を得ずに何をやってもいいという 「どぶろく制度」を作りました。 ある程度メドがつくまでは「こっそり」技術を仕込んでもらって、 もしうまくいったら発表してもらってみんなで事業化を考える。 モノにならなかったとしても構わない、 失敗を恐れず挑戦する意欲を大切にしたいと思います。

いかに高負荷に耐えうるサーバを作ることができるか、 いかに経済的に運用することができるか、 というクラスタリングサーバの研究開発は、 今でこそ Kラボの事業の柱の一つとなっていますが、 最初はケータイJavaアプリを作る合間に「こっそり」仕込んだ技術だったのです。 業務とは直接関係ないことだったが好きだからとやってるうちに、 いつのまにか Kラボのコアコンピタンスになってしまったわけで、 「どぶろく」精神の典型例と言えるでしょう。

技術者の上司は絶対に技術者であるべきです

これは私のこだわりで、ずっと言い続けていることです。 技術者が「技術だけでどこまでも上っていける会社」 「自分のキャリアパスを明確に描ける会社」それが理想。 出世すると技術がなくなったり、上司がいつの間にか技術者でなくなると、 「いずれは技術を捨てなければならない」と思ってしまう。それはありえない。 だから、技術者は研究開発部に所属します。絶対に事業組織にしません。 機能組織が大前提です。

さらに、上司が単に技術者であるというだけでなく、 上司が部下を技術者としての実力で評価できるということを重視しています。 これは、「彼は、このあたりの分野が優れている」などという概要評価ではなく、 例えばソースコードまで見て、優れている点を具体的に評価でき、 さらに改善ポイントもアドバイスできるということです。 一般の会社では、過去の功労者が上にいる企業が多いようですが、 でも彼らは、過去の技術に関しては優れていても、 必ずしも今の技術に関して精通しているとは言えません。 Kラボの場合は、 これからの技術で部下を引っ張っていける人でないと上司にはしません。 上司でも、新しい考え方や新しいパラダイムに適応できない人は、 だんだん退いてもらうことになります。

世の中的には、上流工程を重要な仕事、 下流工程を単純労働と捉える見方があります。 下流は新人がやる仕事と見なされ、 プログラミングをほとんど経験していない人がプログラマーの上司だったりする。 これではマトモな評価ができるはずはありません。 下流には下流なりの難しさがあり、 下流の得意な人たちも、上流と同様に評価されるべきです。 Kラボには、上流が得意な上長と下流が得意な上長の両方がいますので、 下流だから上流より地位が下、ということは全くありません。

Kラボは真の実力主義・能力主義の会社です

成果主義じゃなくて実力主義・能力主義。 どれだけ能力を持っているか、ポテンシャルも含めたところで評価します。 そして能力がある人はドンドン抜擢。能力が開花した時点で、 いきなり倍の給与にしてもいい。 後から来た人が上司を追い抜くのは日常茶飯事です。

多くの会社は成果主義に走りがちです。 それは上司が技術をわかっておらず、技術者をきちんと評価出来ないからです。 部下のやっていることが技術的にどこまで凄いのかを、 評価できないから数字で出るものを信じるしかなく、 「より利益(率)の高いものをやったか?」 ということがメインの指標になってしまいます。 技術というより「いかにコストダウンするか?」 「いかに外注をいじめて安く作るか」 が注力ポイントになってしまい、 技術以外の方向にベクトルが向いてしまう。 そんな会社にはなりたくないし、したくない。

直接成果に結びつかないかもしれないが、新しい知識を貪欲に吸収し、 新しいことをドンドン考え、 自分の考えていることを積極的に発表して皆の役に立つ。 それを重視したいと考えています。 研究開発は会社の中ではコストセンター。 どのみちコストなんだから、お金で換算したくない。 その人の能力・実力で評価したい。 だからTOPに技術者がいなければならないし、 技術者の立場から、他の役員と闘うことこそが CTO (最高技術責任者) の役割だと思っています。

株式会社ケイ・ラボラトリー
取締役CTO 仙石浩明

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